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めざせ皇太子妃

程なくしてお父様からお呼びがかかって、お父様の執務室に赴く。そこにはお父様だけではなくお母様もいらっしゃった。そして呼ばれていないはずの兄エルナンドまでちゃっかりとその場にいた。


「アシュレイ。突然のことで驚かないでほしい。そなたが正式に皇太子妃候補として名を連ねることとなった。それにともない王城に住まい、妃修行をするようにとの王命を賜った」お父様の言葉に、お母様が目を潤ませながらアシュレイの両手を取った。「アシュレイちゃん、貴女はまだ子供だわ。お母様と離れて妃修行なんて早すぎる。嫌なら嫌とおっしゃい!国王には直談判して断りを入れるから!」うるうると目を潤ませながら、さらりととんでもないことを口にするお母様。流石は国王のお姉さまです。王に否やを唱えるとは…


「そうだよアーシュ。私たちに遠慮しないで断るんだ。いくらなんでも今回の勅命は横暴すぎる。私の可愛いアーシュが妃候補と聞くだけでも耐えられないのに、王城に住めと?図々しいにも程がある」いつも穏やかな笑みを称える、淑女、令嬢たちが「春の木漏れ日のような」と例えるお兄様は成りを潜め、冷徹な怒りを隠しもしない。そのままブリザードを発動させて、この屋敷が木っ端微塵に吹き飛んでしまうのではないだろうか?かなり本気でそんなことを心配してしまう。わたしは背筋をぴんと伸ばして、ハースアリア先生から教えられた通りに、スカートの裾を指でつまんで持ち上げると、膝を曲げた。うっすらと笑みを称えながら。


「国王陛下の勅命、慎んでお受けいたします」


優雅に、けれどきっぱりと告げた私に、3人が目を見開いた。お父様は既に娘を嫁にやる父親のごとく男泣きし、お母様は心配そうにおろおろとする。恐る恐るお兄様の様子を伺うと、ピキーンと氷のごとく固まっていた。


執務室を出ると、エルナンドは私の手をつかんだまま自室へと連れ込んだ。「分かっているのかい?アーシュ。城に上がると言うことは私から離れると言うことなんだよ」部屋に入るなり、ぎゅうっと両手を握りしめて顔を近づけるエルナンド。吐息を感じるほどに唇が近いです、お兄様。しかも美しい青の瞳の奥にチリチリと燃えるような怒りを感じます。危険です。ヤンデレ発動の危機です。わたしはゴクンと唾をのみ、悪役姫アシュレイの意地で、しゃんと背筋を伸ばしてお兄様を見つめ返した。


「ずっと大好きなエルの側にいるためですわ、お兄様。本来ならば私はハートランド家の為、どこかの貴族と婚姻を結んで家を出なければなりません。そうなればお兄様のお側にいるどころか、お会いすることすらままなりません。ですがわたくしが皇太子妃となれば、城で勤めるお兄様のお側にいることができるのです。わたくしはお兄様が17才にして既に国王の信頼もめでたく、国政の中枢にて活躍していらっしゃると聞いています。優秀なお兄様が次期国王である皇太子様の側近となるのは決定事項と言っても過言ではありません。でしたらわたくしは、皇太子様の妃としてエルの近くでエルを守り助けたいと思ったのです」


いずれ皇太子妃候補となり屋敷を離れる日が来る。その時のために念入りに考え、心の中で反復した言葉。これほど早く口にすることになるとは思っていなかったけれど、ここで言わずしていつ言う!と覚悟を決めてエルナンドに告げた。いまいち心の準備が整っていない為に、若干声が震えているが、反ってそれがエルナンドの情に訴えたようで、「アーシュ、それほどまでにお前は私を慕ってくれているのだね」そう言って、私の体をぎゅうぎゅうと抱き締めた。

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