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青髪の封魔3(ランセル視点)

「封魔具の開発は進んでる?フェルナルド?」


学園から戻った私は、王宮内の研究室で封魔具の完成を急ぐフェルナルドの元に向かった。白衣を着たフェルナルドは険しい顔で振り向くと、メガネのフレームをくいっと持ち上げた。メガネの奥の目が光る。


「青髪に含まれる魔力の成分を分析し、この髪の魔紋と相性の良い魔石を見つけ出しました。魔石の力で魔力を増幅させることで、今までの数十倍の力の魔力を発揮できるでしょう!それだけの封魔力があれば、アシュレイさんの中の大魔法使いの魂の欠片を封じるだけではなく、大魔法使い本体に掛けられた封印魔法を補強し、さらに強化することも可能でしょう!」


胸を張り、つらつら研究結果を語るフェルナルド。封魔の力を染み込ませた魔石で指輪を作る。指輪をはめた人物の体内に封魔の力を蓄え、増幅させ、最大限に魔力が膨らんだところでアシュレイ姫の体内に注ぐ。と言うのが、フェルナルドが考え、作り出そうとしている封魔具だ。


「最大限に膨らんだ魔力をアシュレイ姫の体内に注ぐ?なんだか、かなり卑猥な響きに感じるのだが?どのような方法でアシュレイ姫の中に魔力を注ぐのだ?」


内容によっては婚約者の私以外には許されない行為なのではないか?いや…もしかしたら婚姻を果たした正真正銘の夫婦でなければ出来ない行為なのではないか?


フェルナルドの返事を聞く己の手を、無意識に強く握りしめる。フェルナルドの返答を待っていると、


「敵に攻撃魔法を打ち込む要領で、ドカーンと封魔を打ち込めばいいだけですよ。というか、それ以外に体内に魔力を注ぐ方法なんてありますか?」


一寸の心の乱れもなく、たんたんと告げるフェルナルド。不埒な妄想をした私が悪いのか?下心丸出しの私がいけないのか?


「汚れていますね」


はぁー、と大きなため息をつくフェルナルド。


「(私の心は)穢れているのか!?フェルナルド!?」


かっと目を見開き心からの叫びを上げると、手に魔石を持ったフェルナルドが、


「そうなんですよ、殿下。この魔石、劣化が酷くて使い物にならないんです」


心底残念そうに、そう言った。そうか魔石の話か……


「確かに色々と残念ですね、ランセル殿下は」


声の主は、蔑みを隠すことなく白い目を向け、盛大なため息を吐くソルト。最近、この男の私に対する扱いが雑な気がする。日に日に性格が悪くなっていないか?我が側近は?


胡散臭げにソルトをジト見するが、まとわりつく私からの視線をものともせず、やつは涼しい顔で話し続けた。


「そんな残念で、おかわいそうなランセル王子のことよりも、魔石の話ですが。フェルナルド先生が手に持っているのは隣国の国石にもなっている柘榴石(ざくろいし)ですよね?隣国の王族が直々に管理する山でしか採れない貴重な石だと聞いていますが」


「柘榴石か!隣国の王族しか持つことが許されないと言う柘榴石。その石でなければ魔力増幅はできないのか?」


「左様にございます、ランセル殿下。そして私の手元にございますこの柘榴石が、唯一国内に存在する柘榴石でございます」


恭しく頷くフェルナルド。だがフェルナルドが言うには、魔力を蓄えて増幅させるためには純度の高い柘榴石でなければならない。ここにある柘榴石は不純物が多すぎて使えない。とのことだった。


「ランセル王子の元婚約者候補でありましたヴィエラ姫ならば、柘榴石をお持ちかもしれません!」


「ヴィエラ姫には頼まないよ」


私の言葉に部屋が静まり返る。婚約者候補だった姫本人に、婚約者として確定したアシュレイ姫のために柘榴石を貸して欲しいなどと、そんな都合の良いお願いができるはずもない。いくら私が、傍目を気にすることなくアシュレイ姫を溺愛しているとしても、分別はわきまえている。


「エルナンドなら、気持ちいいくらいにスパーンと頼むでしょうけどね。『その柘榴石を貸せ』ってね。あ、これじゃあ頼み事じゃなく命令ですね!」


はははっと笑うソルト。煽っている。この男、完全に私を煽っている。エルナンドに出来ることが、王子であるお前にはできないのか?と煽りまくっている。アシュレイ姫のことは助けたい。だがヴィエラ姫をぞんざいに扱えば国交に支障を来す。ただでさえ、婚約者候補として姫が王宮に居たときには、他の候補者同様、空気のごとく無視しまくっていたのだ。これ以上の無礼は許されない。


「そんなヘタレな王子殿下に朗報がございます」


酷い言い草のソルトだが、浮かべる表情は柔和で気高く、頭を垂れる仕草は腹立たしいほどに優雅だった。


「なんだ?」


ふてくされた私にソルトがにっこりと微笑んだ。


「アシュレイ様が在籍しているクラスには、ヴィエラ姫の弟君であるデューイ王子がいらっしゃいます。接触を試みてもよろしいのではないでしょうか?」


ソルトの進言により、デューイ王子に手紙を書き、会う約束を取り付けた。

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