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青髪には魔力が宿る2

太古の魔法。しかも珍しい封印魔法。


青い髪を持つ一族は、妖精の末裔だと噂されている。人は自分とは違う異質の存在を畏れ、排除しようとするものだ。セイレーンも同様に、学園内では異質の存在として疎まれている。


王都学園では珍しい平民と言うだけでも、一部の傲慢な貴族たちから嫌がらせを受けるだろうに、あの目立つ青髪である。平穏な学園生活など、送れるはずもない。それだけでも十分セイレーンに同情するのに、もし彼女が太古の封印魔法を持っているならば、学園に籍を置き続けることすら困難になるのではないのだろうか?


小説の中では、アシュレイに散々苛められて、非業の死を遂げたセイレーン。小説の中の話とはいえ、彼女に不幸な死を与えたのは紛れもなく『私』で。だからこそ彼女には、今度こそ幸せになってもらいたい。そう思っている。


学園に着くと、リンとの別れは早々に、真っ先に彼女を探した。探し始めてすぐ、鮮やかな青い髪を見付けた。セイレーンだ。彼女は中庭のベンチに座って本を読んでいた。青い髪がさらさらと風に靡いている。彼女に近づこうとして、違和感に気づく。


彼女の数メートル後ろに、長身の男性の姿があった。男は木陰から様子をうかがうようにセイレーンを観察している。明らかに不審だ。


セイレーンがベンチから立ち上がり歩き始めると、男は木陰から転がり出てベンチの上に両手をつき、彼女が座っていた場所に顔を埋めるように鼻を近づけた。


げっ!なに?あれ。セイレーンが座ってた場所の臭いを嗅いでる。変態!!!!


とんでもない変質者だ。セイレーンのストーカーか何かだろうか?私は迷いのない足取りで変態男に近づいた。


「何をなさっているのかしら?」


言葉に棘を含ませてギッと睨む。その声に応えるように顔を上げた男を見て、頭のなかが真っ白になる。


「フェルナルド……せんせい?」


変態ストーカー男の正体は、まさかのフェルナルド先生だった。


「やぁ、アシュレイ嬢。険しい顔をしてどうしたんだい?」


ベンチに両手をついたまま、ひょこっと顔だけ上げるフェルナルド先生。『どうした?』って聞きたいのは私の方ですが。


平静を装いつつも、頬がひくひくと痙攣する。


「どうしたもこうしたも、フェルナルド先生こそ何をなさっているのですか?」


そう聞きつつ、先生の手に青い髪の毛が1本握りしめられていることに気づいた。魔道工学、魔道力学の権威であり、何よりも魔道ヲタクであるフェルナルド先生。もし先生が、青髪には太古の魔力が宿っている。ということを知っていれば、当然手に触れて、観察し、調べてみたい。そう思う筈だ。


「ははっ。何でもないよ。いやぁー、ちょっと落とし物をしちゃったかな~?してないかな~?って思ってね。けど勘違いだったかな~?」


目を泳がせて、意味不明な言い訳をするフェルナルド先生。色々と突っ込むのも面倒だったので、単刀直入に聞いた。


「太古の封印魔法に興味がおありなのですか?」


「ふぇ?」


私の質問に情けない声を上げるフェルナルド先生。そして「えぇー?アシュレイ嬢は青髪の魔力の伝説を知っているのかい?」両目を見開いて驚いた。


「聞き齧っただけですが、噂だけは聞いています」


「へぇー。まぁ、アシュレイ嬢の母君は王妹殿下だからね。知っていても不思議はないのかな?」


それにしても国秘の筈だけどな。おかしいなー。とぶつぶつと呟くフェルナルド先生に質問する。


「セイレーンの髪の毛を使って何をするつもりですか?」


何かの実験や研究だろうか?とも考えたが、それならばこそこそと抜け落ちた髪の毛を集めないで、本人に事情を説明して髪の毛を貰えばいい。なのに、そうしない事情を、何となく察知した。


「大魔法使いの封印が綻んでいるのですか?」


小説の中にも大魔法使いが登場するシーンがある。封印を解いて現れた大魔法使いを、アシュレイは己の毒々しい美しさで陥落させて、服従させる。その後、アシュレイの我儘に踊らされた魔法使いは、世界の半分を瓦礫の山へと変えた。


「わたくしが一生かかっても行くことのない世界の果てなど、存在する意味はないわ。邪魔だから消してちょうだい」


アシュレイのその一言で、人どころか虫一匹いない。草ひとつ生えることのない荒野へと変貌させた。相変わらずスケールがでかいわね。小説の中のわたし。


「アシュレイ嬢?え?な、何の事かナー?」


動揺しすぎたフェルナルド先生の声が裏返った。尋常じゃなく頭は良いが、隠し事のできない性格のようだ。


「封印の綻びを補うために、セイレーンの髪に宿る魔力が必要なのですね」


ズバッと聞くと。フェルナルド先生は降参したように「その通りでございます…」小さな声で答えた。

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