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青髪には魔力が宿る

いつものように屋敷から学園へと向かう馬車の中、猫の姿で膝の上にちょこんと座るリンちゃんのもふもふの毛を撫でる。王都学園に通うようになったから、リンちゃんとふれ合う時間がめっきり減った。この短い登校時間に存分にもふもふ充電しようと、無言無心で撫でまくる。リンちゃんは気持ち良さそうに目を細めて「みゃー」と鳴いた後、ゆらゆらと男の子の姿に変わった。


残念、もうちょっともふもふ補充したかったんだけどな…


名残惜しい気持ちもあるが、ふわふわの濃褐色の髪からピョコンと生える猫耳。ひざ小僧が見える半ズボンのお尻からピョコピョコと伸びる尻尾。獣人ショタな愛くるしい姿のリンちゃんも、萌え苦しいくて可愛い。


「あのね、アシュレイ」


大きな2つの目が私を映す。彼が前触れもなく山猫から人間の姿に戻るのは、何か言いたいことがあるからだ。それが分かっているから、先を促すように無言で見返す。


「青い髪には太古の魔力が宿ってるんだって。この前、アシュレイが一緒にいた青い髪のお姉ちゃんの髪の毛にも、封印魔法の力があるらしいよ」


青い髪のお姉ちゃん。それはきっとセイレーンのことだろう。登校初日、偶然セイレーンが他の生徒から嫌がらせを受けているところを見つけ、彼女を助けた。それ以来、彼女とは廊下ですれ違う位しか見ていない。と言うことは、


「リン、登校初日にこっそり学園の中に潜り込んでたわね。王都学園は関係者以外の立ち入りは禁止されてるから、例えリンでも来てはダメって伝えたはずよ」


『いけない子ね』と咎めるように厳しい顔を向けたけれど、


「だってアシュレイが心配だったから」


そう言って、耳を伏せ、尻尾をしゅんと項垂れるリンちゃんの愛くるしい姿をまざまざと見せ付けられてしまっては、許すしかない。


「仕方のない子ね。次からは気を付けてね」


そう告げると、耳をピンとたてて、尻尾をパタパタと振って「はい!」と良いお返事が返ってきた。


「それにしても青髪に太古の魔力があるなんて、初耳なのだけど。リンはどこでその話を知ったの?」


ふわふわの髪の毛を「良い子、良い子」と撫でながら聞く。


「キルだよ」


「え?キルが?」


「そうだよ。聖殿の地下に封印されてる大魔法使い。その魔法使いを封じたのは青い髪の青年だった。ってキルが言ってたよ。だから、アシュレイと一緒にいたお姉ちゃんもきっと封印魔法が使えるよ」


にこにこと無邪気に告げるリンちゃん。


聖殿の地下に大魔法使いが封印されている。この事実を知るのは、ごく一部の王族と高位貴族、そして高位聖職者のみ。なぜリンが知っているのか?そこは不思議だったが、それ以上に気になることがある。


「その言い方だと、まるでキルは大魔法使いを封じる瞬間に立ち会った。みたいに聞こえるけど?」


「うん。キルはその場にいた。って言ってたよ」


口を横に広げて、にこっと笑うリンちゃんを見て固まった。大魔法使いが封印されたのは300年以上前のはず。その時に立ち会ったって…


「キルっていったい幾つなの?」


漏れでた呟きに、


「500才くらい?獣人って長生きだから」


リンがさらりと答えた。へー。ふーん。500才ね。もうファンタジー過ぎて笑っちゃう。乾いた笑いを浮かべかけて、はたと気づく。


「リンは何歳?」


「んー、細かく数えたことはないけど、100才まではいってないよ」


「……へぇ、そうなんだ」


今度こそハハッと乾いた笑いが込み上げた。私の前世年齢と現世年齢を足しても、リンちゃんの年齢には届かない。


「リンって、人生の大先輩だったんデスネ」


驚きすぎて棒読みになる。当のリンちゃんは、何の事か分からないみたいで、目を大きく見開いてキョトンとした。

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