表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/78

国の危機3

大雨の中、只ひたすらに馬を駆る。ソルトが水魔法を使って、雨粒が体を避けるように降ってくれるお陰で、私も馬も濡れることはない。そして隣を走るリンも、私と同じようにソルトの魔法で雨から守られている。


「ソルトの魔法って便利だね」

リンがにこにこ顔でソルトに話しかけた。私以外の人には懐かないリンだけど、何故かソルトの事はお気に入りだ。多分、リンが城の庭園の池に落ちたとき、真っ先にリンのことを助けたからだろう。

「猫は水が苦手だからな。それにリンが風邪を引くと、あいつが悲しむ」

「ソルトはアシュレイが好きなんだね。でも僕、相手がソルトでもアシュレイだけは譲らないからね!」

馬上でえへんと胸を張るリン。先の尖った耳がピクピクと動いている。

ランセル殿下の部下達がいる手前か、ソルトは返事を濁した。


私とリン、そしてソルトの馬は、私達同様、ソルトの水魔法によって雨に濡れることなく走っているけど、他の兵士たちも彼らを乗せている馬たちも雨に濡れ続けることで、通常より体力を消耗しているみたいだった。


「これ以上の進行は無理だな。この村で休もう」


ソルトの判断により、予定していたよりも早く休息することになった。


村長に話をつけて、村の集会所と教会を休息所として提供してもらった。村の女の人たちによって私達に温かいスープが配られた。

「みゃー」

いつの間にか猫に戻ったリンが、温かいミルクを貰って、可愛い舌でペロペロと舐めている。


「本来ならこの村の2つ先の街で馬を乗り換えるはずだったが、予想以上に馬の体力の消耗が激しい。ここで今までの馬を乗り捨てて、新しい馬に乗り換える」

「乗り換えるって言っても、急に70頭もの馬を用意するのは難しいわ」

渋い顔をする私に、ソルトは何でもないことのように言った。

「既に商人ギルドに頼んでおいた。もうすぐ馬は到着するだろう。それまで、暖かくして休んでいろ」


長時間の乗馬で、確かに体は疲れているけど、私やリンの為に長時間の魔法を使い続けたソルトの方が、よほど疲れているだろう。

「お尻は筋肉痛で痛いけれど、私は大丈夫よ。私のことより、ソルトこそ休んで。無理をすれば、ザックを救助する際に支障をきたしますわ!」

村人に通された集会所の一室で、用意された簡易ベッドを指差す。

突然、70名もの大所帯を受け入れるには、充分な部屋も設備もない。


各部屋、数人ずつに別れて休むことになったのだけど、今回参加者の中、唯一女性の私は、リンと共に問答無用にソルトと相部屋になった。


ソルトは私にベッドで眠るようにと言うのだけれど、私は椅子で寝るから大丈夫だと言いながら、側にある木の椅子に座ろうとした。

「強情を張ってないで、言うことを聞け」

ソルトはそう言いながら、私を横抱きに抱き上げてベッドの上へと寝かせた。


「あんまり言うこと聞かないと、このまま襲うぞ」

いつもより低いトーンで、真顔で告げるソルトに、本気で身の危険を感じて背筋がゾクリとする。

「それとも俺に襲ってほしいのか?」

ベッドに横たわる私の顔の直ぐ横に両手をつくソルト。見上げた直ぐ目の前に、私を見下ろすソルトの顔がある。あまりの近さにドクンと心臓が跳ねた。

「ないない。そのようなこと思ってるわけないわ!ソルトの変態!」

ベッドの上、ブンブンと首を横に振って否定すると、ソルトはふっと寂しそうに笑った後、私の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「冗談だ、バカ。何もしないから大人しく寝ろ。出発の時刻には起こす」

そう言って、ソルトは部屋を出た。


なんだ。からかわれただけなんだ。一人で色々と妄想して勘違いした自分が恥ずかしくて、布団を頭までバサッと被った。

「みゃー」

リンが私の布団に潜り込んで丸くなる。小さなリンの温もりを感じながら、知らぬ間に意識が遠退いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ