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白い髪の双子




コン コン コン



金の装飾のされた漆黒の扉が、三度ノックされた。



「セドリックか。入れ。」



扉の向こうにいるであろう人物に、レオンは声をかけた。



「レオン様、失礼いたします。」



部屋へと入って来たセドリックは、品の良い燕尾服に身を包んでいるものの、普段より心なしか伏し目がちに見える。



「レオン様、ミトラ様がいらっしゃっております。」



「ふむ。東側の応接間だな。これから向かうとしよう。」



レオンは先ほどまで何か作業をしていたようで、手に嵌められていた手袋を外しながら立ち上がった。


少し前から、東の応接間にミトラの魔力を感じてはいた。だか、気づいたところで一人で向かえばセドリックや他の家臣達が大慌てで止めに来る。

ミトラ相手であれば別に気にすることもないとレオンは思うのだが、セドリックに言わせれば「そういうものなのです」と言うことなので、部下達をいたずらにやきもきさせる趣味もないので、呼ばれるまで待っていたのだ。



「レオン様、その……」



先程からセドリックは額に汗を浮かべており、発した言葉も何とも歯切れが悪い。

言わなければならない、しかし言いたくない。でも言わないわけにはいかないと、葛藤しているのが見て取れる。



「申し訳ございません。少々面倒ごとが舞い込みまして…」



この時、レオンは場内にミトラ以外の知らない気配をいくつか感じ取っていた。



「それはこの気配のことか?大した力があるわけもなし。ミトラが連れてきたのであれば害なすつもりでもないだろう。」



こともなげにレオンは言うが、セドリックの汗は止まらない。



「仰る通り、害があるともいえませんが、その…」



こんなに嫌な汗をかくセドリックはそう見れるものでもない。

レオンは少し興味が湧いた。



「行けばわかるのだろう。向かうぞ。」



「畏まりました…」







《東応接間》



「久しいな、ミトラ」



レオンが応接室に入ると、ふかふかのソファーにミトラが腰掛け、下に届かない足をぱたぱたと動かしている。


紅茶とちょっとした焼き菓子を出したようで、ティーカップの横の皿は既に空になっている。



「それと、アリスだったな。」



ミトラの足がつくであろうあたりには、白い子犬が行儀よく座っていた。



「久しぶりねぇ、レオン」


「レオン様、お久しぶりでございます!覚えていただいてて感激でございます!」



アリスは本当に喜んでいるようで、まだ短めの尻尾のぶんぶん振っている。



「それでねぇレオン、これ見てくれる?」



ミトラの前のローテーブルには、籠が二つ並んでいる。


一つは山盛りの紅白どんぐりが入っているが、問題はもう一つの籠だ。

赤く汚れた布が掛かっているが、中に二つの気配を感じる。



「何がいるんだ?」



「流石レオンねぇ、すぐにわかるんだから。私は魔力を感じ取れなくて、鑑定するまでわからなかったの。」



そういうと、ミトラは布を取り去った。



「ほう。」



籠の中には、生まれて間もない双子の赤ん坊がいた。



「森の、人間が立ち入れないはずの場所でスプライトたちが見つけたのよねぇ。突然現れたって言ってたから、恐らく転移術で飛ばされたのね。それに、この双子の姉妹、髪が……」



「ふむ。」



籠の中の双子は、ミトラの鑑定の通り双子の姉妹のようだ。掛かっている布が清潔ではないのだが、何か残されているかもしれないとそのままにしている。

赤い汚れは血液のようだが、双子が怪我をしている様子がないので、他の生き物の血液らしい。

特筆すべきはその容姿だが、生え始めた髪が真っ白なのである。



「"白魔病"だな。」



「はくまびょう……って、あれよね?生まれつき魔力が極端に少なくて、成長に必要な魔力も充分じゃないから、髪が白くなるっていう…」



この世に生きとし生けるもの全てには、魔力がある。


小さな虫や花、人間や魔物、魔族も精霊も例外なく魔力を保有している。

魔力を保有出来る量や蓄積する速度は種族差や個体差があり、保有している魔力によって、身体の維持から魔法への変換にまで利用されている。

人間や魔族であれば、保有量や蓄積速度が高いほど高位な魔法を使えるようになるわけで、所謂"優秀な者"となるわけだ。


かつてレオンのところにやってきた勇者などは、一般人と比べ30倍ほどの魔力保有量だった。




「白魔病についてだが…ミトラの言っている白魔病の特徴は、人間達の間で言われている特徴だ。間違ってはいないが、満点ではないな。」



レオンはすやすやと眠る双子の入った籠に魔力を送り、何かを調べながら言った。



「白魔病という名前も、人間達の間でつけられた名前だ。そもそもこの白魔病は、人間しか発症しない。本当のところは病気というほどのものでもないんだが、人間達は対処法を知らんようだからな。」



レオンは眠る双子の額に指を当てると、小さく呪文を唱えた。



「今何をしたのかしら。」



「白魔病を治した、というか、原因を取り払った。魔力が少ないから身体の生成に魔力が行き渡らず、髪が白くなると言われているが、実際には魔力が少ないのではない。魔力が多すぎるのだ。」



「え?そうなの?」



「人間は他の生き物と違って、進化してきた速度が速い。脳の発達を見れば顕著であろう。しかしいかんせん早すぎたのだ。知性に対して魔力が少ないのはそのせいだ。」



レオンはそれから白魔病について説明を始めた。



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