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世話焼き魔王の勇者育成日誌。  作者: 鬼まんぢう
聖都編
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第七十二話 憎しみと復讐の連鎖は、誰かが決死の覚悟で止めなければならない。



 「で、アルブラまでは徒歩で行けるんだな?」

 朝の身支度を終え、俺たちはアルブラ神殿へ向かうために宿を出た。


 「はい。せいぜい三十分程度ですし、わざわざ馬車を使う距離じゃありませんしね」

 ベアトリクスは、いつもと変わらずにこやかだが…



 「……何よ、そんな怒ることないじゃない…」


 そこ、勇者がぶつぶつ言わない。


 「……お兄ちゃん…酷い…………」


 はいはい、自業自得なんだからな。




 昨晩、俺に一服盛った上で自分たちの部屋へ拉致するという、魔王顔負けの嫌がらせをかましてくれた三人娘に、俺が取った報復措置は、



 「あー、ダメだわ。あんな朝ご飯じゃ力が出ない……」

 「おくちのなか……にがにが…………」


 味付けを一切放棄した、特製青汁粥の朝食であった。



 「だいいち…なんなのよアレ。雑草じゃない只の雑草。雑草オブ雑草。人の食べるものじゃないわよ」

 「…お肉……なかった……」

 


 アルセリアとヒルダは、不機嫌さを隠そうともせずにぶつぶつ言い続けている。

 あのなぁ、文句を言いたいのはこっちだっつの。


 それに、青汁は体にいいんだぞ?ビタミンと食物繊維、それに鉄分も。ついでに大豆もぶちこんでやったから、タンパク質だって豊富だ。



 まあ…味付けを完全に度外視して作ったけどさ。こいつらがあんな暴挙にさえ出なければ、ちゃんと「体に良くて美味しい朝ご飯」を作ってやったってのに。


 しっかし…思った以上に効果てきめんだな。こんなことなら、もっと早くにこの手を使えばよかった。


 …約一名、まるで平気そうなのがいるけど。



 「ベアトリクス…お前は青汁平気だったりする?」

 だとしたら、こいつには他の手を考えなくては…

 「あら?誰がそんなこと言いました?」


 慈母の微笑み。だが、目が笑ってない。


 あれ?まさか……


 「リュートさん、ご存じですか?傷付くことを覚悟しなければ、刃を手にすることは許されないんですよ?」

 

 なんか、回りくどいけど怒ってる?


 「いやでも先に仕掛けてきたのはそっち…」


 「復讐の連鎖など、虚しいだけと思いませんか?それでも人は、過ちを繰り返してしまうもの……」


 やっぱり、怒ってらっしゃる!しかも、激怒してらっしゃる!

 仕返ししてやるから今に見てろって、そういうこと!?



 「…そうよね、ビビ。私たちは、美味しい朝ご飯を食べそこなった今朝の私たちの無念を晴らすためにも、修羅の道を往くのよ」


 「いやいやいやいや、お前ら、言ってることおかしくない?どのみち、飯作るのは俺だよね!?」

 

 じゃなくてその前に。勇者が修羅の道を往ったら駄目でしょ!


 「…お兄ちゃん、かくご……」


 ヒルダまで悪ノリをして………悪ノリ…だよね、ノリだよね?


 「まどうしは……冗談いわない…」


 そんなアホな。…いやでも、確かにヒルダが冗談を言っているところは、見たことがない!



 …あれ?おかしいな……なんで俺、追い詰められてるんだろう?


 

 「あーっ!もう!分かったよ。帰ったらおやつ作ってやるから!」

 事実上の降伏宣言に、


 「ほんと?嘘じゃないわよね。嘘だったら承知しないわよ!それと、前にアンタが作ってくれたリンゴのお菓子がいいんだけど!」

 「確か…ガトーインビジブル…でしたっけ?あれも素敵ですが、他に新しいお菓子も食べてみたいです」

 「あ、そうよね!よしリュート、何かとっておきのおやつを作りなさい!!」

 「おかし…あまいの……」


 コロッと態度を翻した三人娘の方が、一枚も二枚も上手うわてだと、痛感したのだった…。


もうすぐ職場のイベントがありまして。素人バンドで演奏することになってるんですよね。あと自分の習い事の発表会も近付いてまして。

仕事とバンド練習と発表会練習で忙殺されてまして、出来る限り毎日更新したいと思っているのですが、飛んでしまう日があるかもです。でも頑張ります。押忍。

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