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世話焼き魔王の勇者育成日誌。  作者: 鬼まんぢう
番外編その2
482/492

学校へ行こう。 第三十八話 魔王陛下は迷子中。




 「これで、良かったのですか?」


 しばらくの沈黙の後。

 ギネヴィアは、俯いたユディットの背中に問いかけた。

 ユディットは、小さく頷く。


 「だったら…どうして貴女は泣いているのですか、ユディ?」


 重ねられた問いに、ユディットの背中がピクリと震えた。



 やがて。

 

 「…これは…っ、嬉し泣き、です……!」


 振り絞るように放たれたユディットの言葉を、ギネヴィアは憐憫とも慈愛ともつかない表情で受け止めていた。

 まるで誰かに言い訳をするかのように、ユディットは続ける。


 「これで……良かったんです…っ……あいつは、ユウトは、炎翼イグニスを…殺し、た、から、許せない、からっ……だから、これ、は、炎翼イグニスの、仇…を討てた、喜びの、涙…なんです!」

 「…ユディ……」

 「だから!私は……後悔なんてしてないんです!!」


 絞り出した叫びに、しかし言葉とは裏腹にユディットは膝から崩れ落ちた。嗚咽が、それ以上の彼女の言葉を阻む。


 ギネヴィアは、そっとユディットに寄り添った。泣きじゃくる生徒の肩を、優しく抱きかかえる。


 「…いいんですよ、ユディ。貴女は何も悪くない。だから、自分に嘘をつく必要もありません」

 「……せん、せい……」

 「貴女は、ユウトを許せなかった。けど、同時に許したかった。…そうですよね?」


 ギネヴィアの言葉に、ユディットは目を見開いた。その事実が、自明のはずの己の心が、今の今までまるで見えていなかったことに気付いて。


 肩は震え、握り締めた拳も震え、声も震わせて。ギネヴィアに見られないように背けた顔は、涙でくしゃくしゃに汚れていた。


 「いいんです。許したいと思う気持ちも、許したくないと思う気持ちも、貴女の大切な気持ちです。どちらを選んでも、それは貴女の過ちではない」

 「先生ぇ………」


 ギネヴィアの、慈母の如き言葉と、柔らかな表情と、温かな手に、ユディットの感情は堰を切った。

 もう隠すつもりもなく、大声を上げて慟哭しギネヴィアにすがりつく。


 ギネヴィアは、痛ましげな表情でそんなユディットの背中を優しく撫で続けていた。


 ……しかし。



 「随分と、興味深い話をしているな」

 「…………!」


 寄り添い合う教師と生徒に向けて、声が掛けられた。言葉の割に、熱の籠っていないぞんざいな声。

 振り返った二人の目が捉えたのは、どこか機嫌の悪そうなシエル=ラングレーの姿だった。


 「……シエル!どうしてここに……今の、聞いて……」

 「断片的な情報だけだったから、状況は推測するしかないけどな。そもそも、オレは実家にも誰にも、ここを訪れると伝えていない。家族が侯爵邸に電報を打つなんてありえないんだよ。さらに言うと、うちの親父は殺しても死なない系の化け物だからな」


 愕然とした顔で問うユディットに対し、シエルはどこまでもぶっきらぼうだった。やけに苛ついているようにも見える。

 

 「シエル、貴方は……どうするつもりですか?」


 怯えるユディットを庇うようにして、ギネヴィアが尋ねた。ユディットに向けるのとは正反対の、冷たく厳しい表情だった。

 まるで、シエルの返答如何では、自分にも考えがある…と言いたげな。


 明らかに友好的とは思えないギネヴィアの双眸にも、シエルは揺らがなかった。ただその苛ついた態度のまま、

 「どうも何も、詳細が分からなければどうにもならない。奴が永遠に消えてなくなるのであれば、万々歳なんだが」

 肩を竦めて、言い捨てる。


 ギネヴィアも、ユディットも、シエルのその言葉を強がりだと考えた。親友を失った悲しみを誤魔化すための強がりだと。

 だから、その後に続けられたシエルの問いに、違和感を抱く。


 「それで、お前たちは一体何をした?奴の息の根を止めたのか?その目で間違いなく、奴が消滅するのを確かめたのか?」


 何故ならば、まるでシエルがユウトの死を望んでいるかのような口振りだったから。


 「……いえ、私たちは、ユウトを殺したわけではありません……こんなことを言っても、言い逃れにもなりませんが」


 ギネヴィアが、ユディットの代わりに答える。シエルの意図がどうであれ、彼女には嘘を付く()()()()()()なかった。


 「私が用いたのは、飢喰迷宮ラビリオ・マンティスという儀式魔術です。亜空間の迷宮に閉じ込められた者は永遠に脱出することは出来ず、やがて迷宮に喰われその一部となる……迷い込んだ者を喰らった迷宮は、それだけ存在値を増していく……例え英雄の血統であろうと、そこから逃れる術はありません」

 「……閉じ込めた、だと?」


 シエルの苛立ちが増した。

 ギネヴィアは、その理由を勘違いする。


 「はい……死が確定した牢獄です。そういう意味では、確かに私は彼を殺したのだと言えますね」

 「先生!それは私が……!」


 下手人は自分であると宣言したギネヴィアに、ユディットは声を上げる。


 「違うの、ラングレー!先生は、私に力を貸してくれただけ!炎翼イグニスの仇を討つ方法を教えてくれただけなの!あいつを、ユウトを殺したのは私なのよ!!」

 「そんなことはどうでもいい」


 ユディットの決死の告白にも、シエルは興味を抱かなかった。


 「そんなこと…?そんなことって……」

 「ああ、どうでもいい。重要なのは、奴が滅び去ったのかどうかだ」


 今にも舌打ちしそうな勢いで、シエルは吐き捨てる。


 「閉じ込めた……閉じ込めただと?ただそれだけ?それじゃ、何の意味もないじゃないか」

 「………ラングレー…?」


 ユディットには、シエルの様子が理解出来ない。親友が殺されて憤っている…にしては、何かがおかしい。何かが、すれ違っている…ような。

 そしてそれは、ギネヴィアも同じ。



 しかしそこに、おそらくは何も分かっていないであろうもう一つの声が。


 「まぁまぁ、小僧。お友達は死んでないって思いたい気持ちは分かるけどよ、それは無理な話だぜ?」

 「……何者だ!?」


 突然の闖入者の声に、シエルは剣を抜き放ち鋭く誰何した。

 そして、悠々と歩いてくるその人影に、否応なしに緊張が高められる。



 それは、何処からともなく現れたのは、一人の男だった。

 下卑た笑みを浮かべ、しかし双眸は抜け目なくシエルを睨み付け……全身を覆う鱗に、鋭く巨大な爪。


 その姿を見た途端、ユディットが小さく悲鳴を漏らした。

 それは、どこからどう見ても人間とは思えなかった。



 「酷いねぇ、お嬢ちゃん。そうあからさまに引かれちゃ、こっちも傷付くじゃねーか」

 竜を擬人化したかのような姿の男は、怯えるユディットの反応が気に入ったようで、上機嫌だった。


 「……魔族、か。その姿からすると、亜種……竜魔族というやつだな」

 「へぇ…小僧、お前さん、随分と博識だな」


 再び男…竜魔族は、シエルに向き直った。

 「なまじっか知識がある分、下手な希望を抱いちまうのかもしれないけどな、飢喰迷宮ラビリオ・マンティスに喰われて生きていられる奴なんざいねぇのさ。廉族れんぞくどころか、天使だろうと魔族だろうと、そこから出られなきゃいずれ力尽きて食われる。んで、迷宮から出ることは絶対に不可能だ。何せ、とんでもないスピードで成長を続ける空間だからな」

 「……………」

 「あー、その喰われた方の小僧、なんつったっけ?英雄の息子だかなんだか?まぁ廉族れんぞくにしてはなかなかの魔力の持ち主らしいが、迷宮にとっちゃ格好の餌食でしかないわな」

 

 歩きながら上機嫌で語り、男が足を止めたのはギネヴィアとユディットの傍らだった。


 「ま、最初の餌にしては上物なんじゃねーの?ご苦労さんだったな、ギネヴィア()()?」


 馴れ馴れしい笑みを見せた男を、ギネヴィアは冷たく…どこか白けた目で見上げる。その腕の中で、ユディットが男の言葉に表情を強張らせた。


 「先生……何?こいつ……何を言っているの…?」

 「……ユディット…………」


 震える瞳でギネヴィアにすがりつくユディットを見て、男は大声で笑い出した。

 「おいおい、ダメだろ先生?生徒に嘘なんてついたらよぉ」

 「……貴方は少し黙っていなさい、ケイガン」

 「おお怖」


 ギネヴィアに睨まれた男…ケイガンは、大仰に肩を竦めた。しかし従う気はないようで、次にユディットに向かって語り出す。


 「ゴメンなぁ、お嬢ちゃん。()()()()、悪気があったわけじゃねーんだよ。ただちょーっと、お嬢ちゃんの家柄と交友関係と復讐心を利用させてもらった、ってだけでよ」

 「…………え…?」

 「ケイガン、いい加減に…」


 遮ろうとしたギネヴィアだったが、ケイガンの顔から笑みが消え、彼女の言葉を逆に封じる。


 「何だよ、今更おままごとに本気になった…とか言うんじゃないだろうな。俺たちの本懐を、忘れたってのか?」

 「…………!」


 二人の遣り取りに、ユディットは混乱する。

 二人は、知り合いなのか。ギネヴィア先生が、何故魔族なんかと知り合いなのか。


 利用した、とはどういうことなのか。


 理解出来ないというよりも理解したくなくて縋るような目をギネヴィアに向けるユディットだったが、ギネヴィアはユディットの目を直視出来なかった。


 「………先生…?」

 「あのな、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんが先生って呼んでるそいつもな、俺と同じなんだよ。で、ちょっとおイタが過ぎた俺たちは魔界にいられなくなってな、こないだの戦のゴタゴタんときに地上界に逃げてきたってわけだ」

 「…同じ……?先生が、あなたと…………」

 「飢喰迷宮ラビリオ・マンティスは、俺たちの宿願に必要不可欠なモノなんだよ。多くの命を喰らって完全に成長した迷宮は、一つの世界…時空界に近い()になる。俺たちの、俺たちのためだけの場所に」


 ケイガンの言葉は、ユディットの意識の上を滑っていく。ユディットは、それをどう解釈したらいいのか、自分がそれに対しどんな感想を抱けばいいのか分からないまま、黙って聞いていた。


 「俺たちは、誰にも邪魔されない自分たちだけの楽園を作りたい。そのために、迷宮の()()に着手した。迷宮に喰わせる餌を用意するには、地上界に上手く溶け込まなきゃ難しい。権力者に近付くことが出来りゃ、計画も楽に進められる」

 「……権力者………近付く……」


 茫然と繰り返すユディットは、嗚咽すらも忘れていた。


 「その点、お嬢ちゃんのとこはお誂え向きだったな。親御さんがお貴族様で、そのくせ視野が狭い。教師として入り込んだこいつに、全く疑いの目も向けやしない。で、軍閥のトップだろ?色々とまぁ、利用価値は高いよな」

 「……要するにお前らは、魔界を追われ自分たちの居場所を作るために儀式魔術に手を出した、と。そして、そのためにクラウゼヴァルツを隠れ蓑にしていた…というわけか」


 シエルが、静かに口を挟んだ。今は苛立ちよりも、警戒が勝っている。静かに闘志を高めながら、敵の隙を密かに探る。


 「隠れ蓑って、人聞きが悪いなぁ……そうさ、そのとおり!飢喰迷宮ラビリオ・マンティスはとにかく儀式に時間がかかるのよ。起動できるようになるまで、それこそ十年以上。その間、俺らだって生活ってのはしてかなきゃならんし、迷宮が完成したらしたで餌を用意しなきゃならんし、そういう面倒なことは全部ギネヴィア()()にお任せしてたってわけだ」

 「そしてこれから、迷宮に多くの人々を喰らわせるつもり…なんだな?」

 「そりゃそうよ!ただの迷宮じゃ意味がねえ。たらふく餌を喰わせて、立派な空間になってもらわねーとな」


 シエルの問いに対するケイガンの答えを聞いて、ユディットは一際大きく身を震わせた。思わずギネヴィアから離れようとして、自分の肩を抱く彼女の腕の力の強さに驚愕し、その顔を凝視する。

 見つめられたギネヴィアは、ユディットに何も言えないでいた。


 「安心しな、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんには世話になっちまったし、これからも世話になるだろうし、お嬢ちゃんだけは助けてやるよ。この国の廉族れんぞくみーんな迷宮に喰わせて、新しい楽園が出来たら大好きな先生とずーっと一緒に楽しく暮らせばいいさ。俺ら亜魔族だけの楽園だけど、特別にお嬢ちゃんは招待してやるって」

 「………復讐に、手を貸してくれた……わけじゃ、なかったんですね……先生?」

 「ユディット………私は…」


 ギネヴィアは、何かを言いかけた。しかし、未だ自分を責める様子のないユディットの頼りなげな瞳を見て、力無く震える肩に触れて、言葉を呑み込んだ。

 それから、何かを諦めるように息をつき、ユディットから手を離すと立ち上がった。

 

 冷たい表情。毅然とした双眸。そこにはもう、慈愛も罪悪感も見当たらない。

 それを見たケイガンは、さらに機嫌を良くした。


 「やっといつもの調子が出てきたじゃねーか、()()。そんじゃ、まずは何をすべきか分かってるよな?」

 「……ユディットのことは、約束ですよ?」

 「わーかってるって。俺だって、アンタを敵に回したくはねえ。お嬢ちゃんの安全は約束する……ただし、お嬢ちゃん()()だ」


 二人の魔族の冷えた目が自分に向けられて、シエルは身構えた。

 天地大戦の折、地上界で主に暴れていたのは魔獣であり、彼とて魔族と直接相対したことは数えるほどしかない。そして、尖兵として彼らの前に現れた魔族たちは、おそらくそれほどの高位体ではなかった。


 この二人は、どうなのだろう。

 竜魔族の頑健さは身に染みている。かつて戦ったことのある竜魔族は、その場にいたことから低位体であろうと思われたが、それでも彼らに甚大な被害を及ぼした。

 仮にこの二人がそれよりも強い力を持っている場合…シエル一人では、到底勝ち目がない。

 しかし…勝ち目がないからと言って逃げることも諦めることも出来ないのが、シエルの在り方…エルゼイ=ラングストンの在り方だった。


 

 シエルが戦う意志を固めていることに気付いたケイガンは下卑た笑みをいっそう深め、ギネヴィアは無表情のままだった。そこに、共に休暇を楽しんだ教師の面影はない…かのように、思われた。

 だが。


 「………おい」

 「分かっています」


 催促するように声を掛けたケイガンに、ギネヴィアは即答する。即答するが、動かない。表情は変えないまま、しかし彼女の足は、手は、一向に動こうとしない。

 そこに、まるで追い打ちをかけるように届いたユディットの叫び。


 「先生、やめて!どうしてラングレーまで殺すの?そんな必要ないでしょ!?お願い、やめて!!」


 ギネヴィアは、視線だけを動かしてユディットを見た。まだ涙は乾いていない。しかし、己を取り巻く理解困難な事態に振り回され立ち止まるより、目の前の事態に向き合うことを選んだ若草色の瞳は、想像以上に強い輝きを孕んでギネヴィアを真っ直ぐ見つめていた。


 「自分のしたことは、後悔…してない!けど、もう嫌なの、これ以上、誰かが死ぬのは嫌なの!!」


 それは、あまりに身勝手な思い。復讐さえ終われば修羅の道を外れたいという、浅はかな考え。それでもユディットは、少なくとも己の罪から目を逸らすつもりはないようだった。


 「ユディ……」

 「お願い、先生。私の知ってる先生は、そんなことしないよね?」


 二人の遣り取りに、シエルは警戒を緩めることはなかった。

 確かに、ギネヴィアは躊躇している。廉族ユディットに情が移ったか、或いは廉族シエルに情が湧いたか、それは分からない。

 感情に動かされるのは魔族も廉族れんぞくも同じだ。シエルとて、魔族は全て血も涙もない殺戮者だとは考えていない…今となっては。

 しかし、そこでギネヴィアの情に訴えるのはあまりにも愚策だった。種族問わず、感情それよりも優先するものを持つ者は多い。

 ケイガンの言う宿願とやらを無為にしてまで、彼女が自分の気持ちを大切にするかと言えば……とてもそうは思えなかった。



 一方で、ケイガンはシエルとは違う考えのようだった。

 「あーー、もう、仕方ねーなぁ」

 困った同僚を見かねた、といった調子で大きく溜息をつき、肩を竦める。

 「ま、俺もお前さんのそういう情に厚いところは嫌いじゃねーし、今までそれに随分助けられてきたし、だからこそお前は俺らの頭領ボスなんだしな」

 

 そして、ギネヴィアよりも前に出てシエルに好戦的な目を向ける。

 「悪いな、小僧。綺麗なおねーちゃんじゃなくて、こんなむさい野郎が相手でよ」


 どうやら、シエルの相手はギネヴィアではなくケイガンになるらしい。

 どちらともまだ戦っていないので詳細は不明だが、彼の戦士の勘は、ケイガンよりもギネヴィアの方が厄介だと告げていた。そういう意味では、この状況は彼の利となる。

 とは言え、ケイガンならば勝てるという確信があるわけではない…どころか、普通に考えれば勝てるとは思えない。

 勝算があるとすれば、ケイガンが自分のことを侮っている点。シエルは、自分の情報をユディットにもギネヴィアにも伝えていない。したがって、ケイガンも自分をただの非力な廉族れんぞくだと思っているだろう。

 魔族には、廉族れんぞくを取るに足らない小物だと見下す傾向が強い。そしてそれ相手に本気になることは恥ずかしいことだと避けたがる傾向も。

 ケイガンの態度には余裕が満ち溢れていて、シエルを過小評価していることは間違いない。その隙を突くことが出来れば、或いは…。


 しかしその手が使えるのも一度限り。一撃で決められなければ、シエルの負けだ。そして、一撃で竜魔族を仕留めるだけの攻撃が、可能なのか。

 不確定な事項に賭けるのは愚策。しかし、それに賭ける以外に活路はない。


 シエルは覚悟を決めると、静かに、密かに魔力を練り上げる。



 ケイガンは、絶望を見せずに自分に立ち向かおうとしている廉族シエルを見て、残忍な笑みで口元を歪めた。どんな風に()()()かと、考えているのだろうか。


 「…んじゃ、茶番はこのくらいで終いにしようか」


 そしてケイガンは、鋭い刃のような爪を持つ腕を、大きく振り上げ…不意に向きを変え。


 ()()()()()()胴を、深く切り裂いた。




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