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世話焼き魔王の勇者育成日誌。  作者: 鬼まんぢう
番外編
430/492

番外編 世話焼き魔王の妹、ちょっと世界を救ってきます。その1

番外編です。桜庭家のアイドル、悠香ちゃんが主人公です、一応。

時系列的に、ドリームハウス建設の直前あたりですが、本編との絡みはありません。

ちょっと流れが不自然ですが、番外編なので深いこと考えずに読んでいただけたら……



 HR終了のチャイムが鳴った。

 生徒たちは、部活動に勤しんだり委員会に参加したり、或いはそそくさと帰宅したり帰宅途中で寄り道したり。

 平日の一日の中で、最も解放感に満ちた時間である。


 市立八郷中学校三年、桜庭 悠香 は、受験生であるため帰宅組である。とは言っても、受験予定の高校は彼女の内申からすると充分に安全圏内(A判定)で、それほどの緊迫感を持っているわけではない。

 彼女が帰宅を急ぐ理由は、勉強ではなく家事のためだ。

 両親は共に多忙。最近は家族の時間を作ってくれるようにはなったが、それでも仕事量が減るわけではなくペースアップで帰宅時間を早めているだけの話であり、疲れて帰ってくる母親の負担を少しでも減らすべく、悠香は家事分担を自ら申し出ているのだ。

 なお、父親は警察官であり遅番早番不規則なため、ほとんど家のことをする余裕はない。だが、非番の日や空き時間は出来る限り家事に参加してくれるし、イベントプランナーで超多忙なはずの母親も、悠香自身は自分が全て引き受けるつもりでいたところを、娘一人に押し付けるわけにはいかないと家族全員の分担制にしてくれた。

 しかし、一年と少し前までは、彼女ら家族にそんなことを考える必要などなかった。

 悠香には、家事大好き人間の兄がいたからである。


 それまでは、家事一切を兄が取り仕切ってくれていた。毎日の食事作りに始まり(家族の分の弁当も含む)、掃除、洗濯(これは流石に休日にまとめていた)、諸々の買い物…等。

 どのように時間をやりくりしていたかは分からないが、おかげで悠香は毎日をのんびり過ごせていたし、両親は家のことが疎かになるくらい、仕事に専念出来ていた。


 だが、兄はもういない。

 車に轢かれそうになった女性を助ける、という実にお節介な兄らしい行動の結果、帰らぬ人となってしまった。

 そしてそのとき初めて、悠香と両親は自分たちが如何に桜庭家長男に甘えていたのかを知った。

 その後両親がいきなり家のことを重視し出したのも、大きな後悔があったからに違いない。

 悠香とて同じだ。何故、台所に立つ兄の隣で手伝おうとしなかったのか。洗濯物を一緒に干さなかったのか。掃除を手分けしなかったのか。

 そうすれば、少しでも多くの時間を、兄と過ごせたはずなのに。


 兄が死んでから、悠香は特に料理に力を入れている。他の家事は別として、それだけは決して両親に任せようとはしない。

 兄は、料理がとても得意で大好きだったから。レシピなど遺していってくれてはいないが、色々と試行錯誤して兄の味を再現しようとすることで、彼女は自分の中の喪失感を埋めようとしていたのだった。


 

 今日の夕飯は、おろしソースの和風ハンバーグと、なめこの味噌汁、切り干し大根の和え物と冷奴。大根がなかったことを思い出し、帰りに八百屋に寄って行こうと商店街の方へ遠回りすることにした。


 三叉路で、彼女は一旦足を止めた。別に信号があるわけではなく、車が通ったわけでもない。

 ただ、右の道がガス管工事で通行止めになっていたのである。


 普段、彼女は右に進んで商店街へ向かう。 

 実を言うと、左回りの方が八百屋には近いのだ。しかし、そうするとどうしても()()交差点を通ることになってしまう。


 あの交差点……兄が命を落とした、その現場。


 兄が死んでからずっと、その場所を避け続けてきた。交差点近くの店に用事があるときでも、わざわざ遠回りしてまで、頑なに。

 現実から目を逸らしたい…というのとは、少し違う。兄が死んでしまったことも、もう二度と逢えないことも、身を切られるほどに辛いことではあるが、どうにもしようがないことだと分かっている。諦めに近い感情と言ってもいい。

 それでも、大好きなお兄ちゃんが死んだ場所を、平気な顔で通り過ぎる自信がなかった。


 けれども、右の道は通行止め。この道を通らずに、さらに例の交差点を避けようと思ったら、さらに遠回りをしなくてはならない。


 一瞬だけ躊躇して、それから悠香は意を決して左の道を選んだ。

 遠回りと言っても、せいぜい10分かそこらである。たいしたロスではない。

 しかし、これもいい機会かと思ったのだ。


 いつまでも、囚われていてはいけない。兄は、重苦しかったり湿っぽかったりする空気が苦手だったから。

 妹の自分が引きずったままでは、きっと天国の兄に笑われてしまう。どこかで乗り越えなければならないことであるなら、今日がその日なのかもしれない。


 道を選ぶのにここまで大仰に考えてしまった自分が馬鹿らしくて苦笑しつつ、悠香は前を見据え、地面をしっかりと踏みしめて歩いた。

 あの日の不安と恐怖を思い出してしまっても、崩れ落ちたりしないように。



 実際にその交差点を前にして、意外なくらいに悠香は平静だった。

 横断歩道が目に入った瞬間だけは、心拍が跳ねあがるのを感じた。しかし、それっきり。

 道行く人々は日常の風景に溶け込んでいて、当然のことながら、道路の血溜まりもとっくに洗い流されている。

 ただ、街灯の柱に括りつけられた真新しい花束だけが、兄の痕跡を僅かに感じさせるだけだった。


 同じ花を、自宅の仏壇で見た。おそらく、母か父のしたことだろう。

 確か、あまり長い間花を供えておくと地縛霊になっちゃうんじゃなかったっけ。そんなことを思いつつ、でも兄のことだから地縛霊になったりしたらどんな無理をしてでも自分のところに会いにきてくれるはず…とも思いつつ、彼女は花束を横目に、青信号を渡った。


 

 青信号だから絶対に安心だ、だなんて思わない。現に、兄は信号無視の車のせいで死んだ。

 だから悠香は、信号が青に変わっても左右確認を厳重にする。直進車だけでなく、右左折してくる車にも注意を払い、確実に安全だと判断して初めて、道を渡るのだ。


 しかし、流石に見知らぬ空間に迷い込んでしまうだなんて可能性には、まったくもって思い至らなかった。




 「…………は?」


 呆けた声が自分の喉から漏れ出る。

 街の喧騒は何処かに追いやられ、商店街も買い物客も電柱も自動車もアーケードも、つい一瞬前まで目の前にあった光景が、今はどこにも見当たらない。


 そこは、真っ白な、何もない空間だった。


 

 「…え?え?なに、何これ??」


 彼女は、独り言だと分かっていて敢えて声に出した。その空間があまりにも静まり返っていて、自分の耳がどうかしてしまったのではないかと危惧したからだ。

 

 しかし、聞こえてきたのはいつもの自分の声。さらに、目も無事かと自分の身体を見渡してみるが、これもいつもどおり。いつもの制服に、学生鞄と補助バッグ。鏡は見ていないが、この分だと変てこりんな化け物に変身してたりすることもなさそうだ。


 

 不思議と、恐怖はなかった。

 ここが何処かも分からず、どうして来てしまったのかも分からず、どうしたら戻れるかも分からないというのに、恐怖や焦りや不安といった感情は沈黙している。

 あまりに荒唐無稽過ぎて、感情が麻痺しているのだろうか。

 或いは、自分は夢を見ているだけなのか。



 夢なら夢で、では自分が商店街にいたというのも夢なのか、どこからが夢なのか、と訝しく思っていると。



 「あーーーー、ようやく会えました!もう、遅かったじゃないですか!!」

 いきなり背後から、責めるような声。反射的に振り返ってから、悠香はしばらく固まった。


 そこにいたのは、金髪碧眼の女性。年齢は…十代のようにも二十代のようにも見えるが、とりあえず自分よりは上で、そして若い。

 そしてそして何より、その美貌たるや。

 どんな芸能人、どんなハリウッド女優でも、ここまでの美人は見たことがない。化粧っ気はないのに、華のある顔立ち。大きな瞳と長い睫毛、すっと通る鼻梁、薄紅色のつややかな唇。雪花石膏アラバスターの肌。細身だが健康的な体躯。

 気後れするほどの美人なのに、何故か親しみやすさも持っていた。その表情が、少し不貞腐れているように見えたからだろうか。悠香は、見ず知らずの超絶美女に臆せず話しかけることが出来た。


 「あの…すみません。どこかでお会いしましたっけ?」


 悠香には、この美女に見覚えはない。だが美女の口振りだと、まるで知り合いのようだ。だから、そんなことを聞いてみたのだが。


 「あ、いえいえ。そういうわけではないんですけど」

 …と、あっさり否定されてしまった。

 

 「えっと…それじゃ、ようやく会えたっていうのは…?それに、ここは何処なんですか?」


 奇妙な夢だが面白そうだ。そう思って、悠香は美女に話を合わせようとする。


 「ええと、ここは、私の意識の中です。バラバラになった本体の欠片のうち、回収され損なって忘れられた一つなんですけどね」


 …だが、美女は悠香に合わせてはくれない。一体何のことを言っているのか、悠香にはまるで分からない。

 

 「……は?えと、すみません何言ってるのかちょっと分からないんですけど」

 「あー、気にしないで下さい大したことじゃないんで」


 訝し気な悠香に、美女は説明をしてくれるつもりはないようだ。

 悠香は悠香で、夢だからこんなものか、と変に納得して美女の続きを待つ。


 「えー、まずは、自己紹介しますね。私は、エルリアーシェ=ルーディア。とある世界の“神”です」

 「…………はぁ…」


 夢でいきなり自称神の変人に会ってしまったときはどう対処すればいいのか、人生経験に乏しい悠香には分からない。とりあえず、生返事をしておいた。

 しかしすぐに、名乗り返さないのは失礼かと思い、慌てて


 「私は、桜庭悠香っていいます。ええと……よろしく」

 何がよろしくなのか分からないが、そう付け足した。


 「悠香さん、急なことで申し訳ないんですけど、貴女には私の世界…エクスフィアを救ってもらいたいんです」

 「……はぁ!?」


 今度は、生返事ではない。何をふざけたこと抜かしてるんだこのヤロー的な、抗議である。


 「ちょ……ちょっとそんなツンケンしなくってもいいじゃないですかぁ…」


 悠香の剣幕にたじろいで、美女…エルリアーシェと名乗った自称神が、半ベソになって少し後ずさった。

 神を名乗るなら女子中学生にビビっててどうする…と悠香は思ったが、それを言うと泣かせてしまいそうなので我慢した。


 「……すいません急に変なこと言われたもんですから」

 謝りつつ悠香は、こんな夢を見るということは自分の中に世界救済だとか厨二的願望があったりするのかけどそれは認めたくない…と内心で葛藤。

 悠香のそんな葛藤を知ってか知らずか、エルリアーシェはさっさと立ち直り、しれっと続ける。


 「これは、貴女にしか出来ないことなんです、悠香さん!」


 キラキラした瞳でそう言われ、悠香はまんざらでもない…なんてことはなく、いよいよ頭を抱える。

 自分にしか出来ないだとか、選ばれた存在…的な?こんなイタい夢を見ただなんて、クラスメイトに知られたら卒業までずっと弄られるに決まってる。


 「あのー……どうかしましたか…?」


 頭を抱えている悠香が不思議なようで、エルリアーシェは首を傾げた。

 自称神には、女子中学生の複雑かつ繊細な心境は理解出来まい。


 「いえ…気にしないで下さい…どうせ夢なんで……続きをどうぞ」


 夢相手に真面目になるのも馬鹿らしく、悠香は開き直ることにした。どうせ夢の中のことは、自分から話さなければ誰にも知られることはない。

 自分にこっ恥ずかしい英雄願望があっただなんて認めたくはないが、夢に見るまでなのだから潜在的に大きな欲求なのだろう。だったらせめて、夢の中でくらい思いっきりその願望を叶えてしまうのもアリだと、自分に無理矢理言い聞かせたのだ。


 「あ、はい、どうも。それじゃ、お言葉に甘えて………悠香さん、貴女には、エクスフィアでちょっと好き勝手やってる魔王にお灸を据えてやってほしいのです」


 エルリアーシェの台詞は、まあまあ想定の範囲内だった。

 女子である悠香には、あまり男子が好むゲームやラノベの内容は分からない。また、彼女自身そういったものにほとんど興味を持っていない。

 だが、クラスの腐女子の友人が興奮しきりに語ってくるアニメやらゲームやらの内容の断片から、どうもそういう主人公たちは、魔王を倒したり世界を救ったり王子と結ばれたりするものらしい…という程度の知識は持ち合わせていた。


 「あー…魔王退治ってやつですかぁ」

 

 気乗りせず、しかし話に付き合うことにしたので仕方なくそう返すと、意外なことにエルリアーシェは首を横に振った。


 「いえいえ、退治しちゃダメですよ。そんなことしたら、良くない方の私の思うツボじゃないですか」

 「…良くない方の?何ですかそれ?魔王って退治するものじゃないんですか?」

 

 ああ、でもそう言えば、その友人が二周目以降は魔王も攻略対象になるとかなんとか……攻略って何だろう。

 

 退治でなければ、「お灸を据える」というのはどういう意味なのか。あと、良くない方のエルリアーシェって、何のことなのか。


 「ええとですね、詳しく説明している時間はないんですけど、その、魔王っていうのがちょーっと困った性格してまして……」

 「すっごく悪い奴ってことですか?」


 魔王って、悪魔の王なんだよね。そう思い、悠香はテンプレの魔王を思い浮かべるのだが、どうもエルリアーシェが言っている魔王は少し違うようだ。


 「いえいえいえいえ。悪い奴じゃないですよ?面倒見良くって、世話好きで、お人好しで、困ってる人を見ると放っておけない、ナイスガイですよ?」

 「それ……魔王じゃないじゃないですか」


 まるで自分の兄のような魔王だな。悠香はそう思った。


 「まぁ、魔王ってのは単なる呼び名なんですけど…」

 「それで、そんなナイスガイの何処にお灸を据えるんですか?」


 悪い奴でないのなら、懲らしめる必要などないだろう。

 悠香がそう思うのも自然なことであったのだが、


 「…女癖の悪さです」


 急に真顔になって答えたエルリアーシェに、どうツッコもうか悩んでしまった。

 しかも、エルリアーシェの表情。腹に据えかねているような、ものすっごく面白くなさそうな、要するに不機嫌そうな顔。


 「……女癖?」

 「そう、女癖です」

 「悪い…んですか?」

 「もう、最悪です」


 話しているうちに何かを思い出したのか、エルリアーシェは拳を握りしめて愚痴り始めた。


 「大体、女性と見たら所かまわずタラシ込むって、どういうことですか?しかも本人、イマイチ自覚が薄いし!そのくせ誘われたらホイホイ受け容れるし!節操がないにも程がありますよ!!」


 どうやら、面倒見が良くて世話好きでお人好しで困ってる人を見ると放っておけないナイスガイな魔王は、女の敵な存在らしい。


 「その人、モテるんですか?」

 「モテます!そりゃあもう、腹立たしいくらいに!!それをいいことに、会う女性会う女性口説いたり口説かれたりとっかえひっかえしたりもう、好き放題なんですぅ!!」

 「それは……いけませんね」

 「そうです!懲らしめなければならないんです!好きでもない相手とそういうことするのは良くないって、思い知らせなきゃいけないんです!!」


 鼻息荒くまくしたてるエルリアーシェを見ていると、悠香は一つの事実に思い至った。


 「ええと…お姉さん、その…魔王?のこと、好きなんでしょ」


 彼女の憤りは、まさしく好きな男性へのものだ。

 

 「お姉さん美人なんだし、告白したらどうですか?」

 

 こんなところで腹を立てているより、そして無関係の悠香を巻き込むより、その方が早いような気がする。

 ここまでの美女に告白されて心動かない男などいないだろう。


 「す……好きですけど!大好きですけど!そしてそれは向こうもそうなんですけど!そういうことじゃないんです!!」

 「そういうことじゃ…って、じゃあ、どういうことなんですか」


 なんだ両想いなんじゃないか。悠香は呆れたが、エルリアーシェは何やら納得出来ていない。


 「私たちがお互いを好き合ってるのは、また別の話なんです!とにかく、女性に対してあまりにウェルカムすぎるヴェル…魔王を、懲らしめちゃってください!!」

 「…えー……それ、なんで私が……」


 第一、会ったこともない魔王の女癖の悪さを、どう直せと言うのか。そして、何故自分が直さなくてはならないのか。

 と言うか、こんな英雄願望、聞いたことがない。


 「…って、それ、なんで世界を救うって話になるんですか」


 魔王の女癖が悪かろうと、そいつが面倒見よくて世話好きでお人好しで困ってる人を見ると放っておけないナイスガイであるのならば、ちょっと泣かされる女性が多いくらいで済むのではないか。


 同じ女としてそいつには言ってやりたいこともあるが、世界を救うだなんて大げさな話に繋がるとは思えない。


 悠香の考えていることを察したのか、エルリアーシェが途端に言い訳がましくなった。


 「いえ、今はまだいいんですけどね。これで万が一、可能性は非常に小さいんですけど、それでも万が一、魔王の子供がたくさん出来ちゃったりすると、この先エライ面倒なことになるんですよ。それこそ、世界の危機です!権力争いで、世界滅亡です!!」

 「………さいですか」


 ここまで話に付き合ってきた悠香ではあるが、そろそろ本気で馬鹿らしくなってきた。

 一体全体どういう心境で自分がこんな夢を見ているのかが分からないが、もしかしたら心療内科とかに通った方がいいかもしれない。


 「で、なんで私…?」

 「ですから、貴女にしか出来ないって言ったでしょう!他の人じゃ、駄目なんです!」

 「いや、だからなんで…」

 「あ!もう時間が!!」


 エルリアーシェがいきなり叫んだ。時間も何も、ここには時計がないし太陽もないので今が昼か夜かも分からない。

 しかし、急にソワソワしだしたエルリアーシェを見て、やっと目が覚める時間になったのか、と悠香は胸を撫でおろした。

 実に意味不明な夢だった。世界を救う英雄になる…と思いきや、魔王の女癖を治せ、などと。しかし夢は荒唐無稽なものだし、理屈で説明出来なくても仕方ない。


 「すみません、悠香さん!もう時間がないので貴女をあちらに送りますが、帰り道はちゃんと用意してありますからね、心配しないで下さいね!それじゃ、彼によろしく!!」

 「え、あの、帰り道って」


 一方的なエルリアーシェに思わず問いかけようとした悠香の言葉は、眩い光に遮られた。

 

 やがて光は去り、瞑っていた眼を恐る恐る開けると、エルリアーシェは消えていた。

 真っ白な空間は、なんだか重厚で豪勢な部屋の中に変わっていた。

 夢から覚めたかと思ったのに、ここも見知らぬ場所である。


 まだ夢は続くのか、と少々げんなりしながら周囲を見渡す悠香だったが。



 「……な…何者だ、貴様!一体どこから現れた!?」


 警戒と緊張を最大限にまで引き上げたような声が、背中からぶつけられた。



 

やっぱり、明るくて健全な創世神は書いてて和みます。本編ラスト近辺では、かなりヤンデレが突き抜けてましたからねー…

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― 新着の感想 ―
[一言]  ……いや、本編と絡まんって、魔王と絡んだら否応なしにたとえ端っこの方でも本編とリンクしてしまいそうな気がするのはこちらの気のせいかな?
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