表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世話焼き魔王の勇者育成日誌。  作者: 鬼まんぢう
新世界編
382/492

第三百七十六話 地天使の主張





 「ジオラディア様……!何故、このようなことをお認めになるのですか!?」

 

 口火を切ったのは、シグルキアス。意外なことに、自分よりも上位にいる天使に対して怒りすら見せて食って掛かる。


 ……こいつ、ビビりなんだか度胸あるんだか分かんないなー。



 ジオラディアは、険しい顔をして自分を見るシグルキアスに、冷ややかな目を向けた。


 「……士天使シグルキアス。御神の示す未来を拒絶したばかりか、保身のために悪しき王に与するとは……天使族の誇りを失ったか、愚か者が」

 「天使族の誇りとは、理不尽な運命を黙って受け容れることを言うのですか!!」


 おおお、シグさんてば負けてない。完っ全に見下されてるけど、決して恐れず卑屈にならず堂々と答えている。


 ……ちっ、いけ好かないヤローのくせに格好つけやがって。



 「理不尽…?何が理不尽か。御神の目指す新たな世界は、理想を具現化した場所となる。欲望もなく、したがって争いは起きず、苦痛もなく、そこにあるのは暖かな微睡みだけ。全も個もなく、全ては等しく、そして通じ合える世界。その理想世界の、何を理不尽と言う?」


 ……全も個もない世界。それが、アルシェの望む世界…か。

 

 何となく予想はしていた。この世界の創世期、彼女のテーマは「ごちゃ混ぜ」だった。多様性と呼んでもいい。全ての可能性を否定せず、自然の流れに成り行きを任せ、完成予想図のないモザイク絵が出来上がるのを楽しみにする、その過程プロセスにこそ価値がある。


 彼女は、「ガラッと変える」と言っていた。であるならば、次は画一的で管理のしやすい世界を目指すのだろうと、そんな気がしていたのだ。



 「それ以前の話として、この世界の滅亡があります。この世界に住まう全ての生命を犠牲にし、理想を追求なさるのが慈悲深き御神のなさることか!!」

 「この世界で苦しむ多くの生命を見て、御神はお悔やみになられたのだ。そして次こそは、苦しむ者の存在しない世界をお創りになるべく、汚れきった旧き世界をリセットなさるのだ」

 「しかし、我らは今、()()に生きております!!」

 「…………愚鈍な者が相手では、埒が明かぬな」



 ジオラディアは、それ以上の問答を打ち切るつもりのようだ。その視線に込められる圧が増す。



 「朽ち果てるがいい」


 そして、副ボス戦が始まった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ジオラディアは俺に対し、「永遠に眠ってもらう」みたいなこと言っていたけど、本心では…本気ではないだろう。奴では俺を滅ぼすことが出来ないことは、分かり切った事実。


 となると、こいつの目的は………時間稼ぎか。

 アルシェの奴、トンズラこくつもりじゃないだろうな?



 「アスターシャ、ここは任せてもいいか?」

 「は、お任せを」


 ただでさえかくれんぼが得意なアルシェのことだ、ここで見失ったら面倒なことになる。俺はこの場をアスターシャに任せ、一人で先へ進むことにした。



 「…逃すか!」


 俺を足止めしたいであろうジオラディアは、逃すまいと神聖術式を放つ。名前は知らない。七色に輝く光の奔流が、指向性を持って俺へと迫る。

 それは、まるで光の龍。意思や命を持たないはずのそれはしかし、術者ジオラディアの俺への敵意を受け継いだかのごとく憎悪にも見える形相で、そのあぎとを大きく開いて躍りかかってきた。


 ……が。


 容赦のない牙が俺へと突き立てられるより早く、アスターシャが動く。動いたということすら分からないくらいの速度と最小限のモーションで、愛用の魔剣を一閃。

 光龍は身体を幾つにも分断され、そのまま消え去った。



 「…………な…!?」


 驚愕したのはジオラディア。物理攻撃で術式を消滅させるなんて芸当、おそらく初めて見たに違いない。

 だが、アスターシャの持つ魔剣“霊滅紅ルベルカーサ”は、有形無形を問わず万物を()()ための武器。

 斬る対象が自分より存在値の勝るものでなければ、彼女に斬れないものはない。某三世の一味が持ってる斬〇剣顔負けの代物なのだ。

 

 

 創世神が復活した今、四皇天使であるジオラディアの実力は六武王であるアスターシャに匹敵する。だが、俺はそれほど心配してはいなかった。


 六武王の一人、アスターシャ=レン。

 その性質は、静にして烈。

 総合的な戦闘力はルクレティウスに一歩遅れを取るが、そしてディアルディオのような広範囲攻撃手段も持たないが、潔いほどに全てを攻撃に割り振ったパラメーターは、一対一サシの戦闘において彼女を無敵たらしめている。


 加えて、彼女の元にはエルネストを残していく。彼の超回復があれば、アスターシャの唯一にして最大の弱点である防御面はほぼクリアも同然。


 二人ならば、きっと大丈夫。

 ……え?シグルキアス?ああ、あいつは……まぁ、攪乱程度に頑張ってもらえればそれでいいや。



 「…陛下、お早く」


 ジオラディアを鋭く見据えたまま、アスターシャは俺を促した。

 エルネストも、ここはお任せください、と言わんばかりに頷いてくれる。あと何故かシグルキアスも、心得たみたいな感じの表情になってたりするがそこはスルーして(酷い)。


 信頼出来る臣下にこの場を任せ、俺は駆け出した。

 




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 走りながら、アルシェを探す。ここから先の区画は入ったことがないので虱潰しに…というわけでもなく。


 ふん、アルシェの奴。かくれんぼったって、そうはいかないからな。ここまで距離が近ければ、あいつの気配を辿ることなんてお手の物だ。

 空間ごと隠れてたりしたって、残滓があればそのくらい察知出来る。以前の俺はそういう面倒なことなんてすることもなかったが、その気になれば俺だってなぁ。



 …………ん?

 …………………んん?


 あれ?なんか………気配が沢山…………?



 あっちにもアルシェ、こっちにもアルシェ、そっちにもどっちにも…………???


 なんかあちこちに、アルシェの気配が散らばってるんですけど……絶対デコイだと思うんだけど……どれが本物?



 くっそー、結局虱潰しかよ!あいつ、地味な嫌がらせしやがって!!

 ……まぁいい。天界に来た時点で、中央殿の周囲の空間は閉じてある。アルシェだったら強引にこじ開けて出て行くことは可能だろうが、そうすれば痕跡が残る。痕跡が残れば、跡を辿ることも出来る。


 絶対逃がしてやらねーからな、待ってやがれ!!

たまにサブタイが思いつかなくて適当なの付けてたりします。特に短いときは大抵そうだったり。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ