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世話焼き魔王の勇者育成日誌。  作者: 鬼まんぢう
魔族の末裔編
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第百四十六話 ちょっと寄り道④ 平地だって、いいじゃないか。




 「ちょっとリュート。そこ座んなさい」

 

 明日に備えて早めに寝ようと部屋に戻った俺を待ち受けていたのは、怒りMAXで今にも髪を逆立てそうに仁王立ちしている神託の勇者アルセリアだった。



 「……え?え??何………か、あった……?」

 出来れば早く寝たいと思うのだが、彼女がこういう状態のときに、そんなこと言えるはずがない。短い付き合いの中で俺は、その程度のことは学習していた。


 あと、理由は不明だし心当たりもないが、彼女の怒りの原因が俺だということも、確かだ。


 

 …なんだろう。ここ最近、こいつを怒らせるようなことしたっけ……?つかそもそも、三人娘の怒りスイッチが何処にあるのかよく分かっていないからこういうことになるんだけどさ。


 でも大抵、俺、悪くないことがほとんどじゃんね?


 ……とも言えず、俺は大人しく彼女の目の前に正座した。



 「で、聞かせてもらいましょうか。アンタ、魔界で女の子たちを集めさせて、それで何するつもりなわけ?」


 ………………?

 ……………………………??


 え?何それ?女の子たちを集めさせて?何その、すっごく悪いこと企んでますみたいな所業は。いつ、誰がそんなことをしたって?



 …………俺…?



 「え!?えええ!?や、知らないってそんなの。なんで俺がそんなこと……」

 「しらばっくれるんじゃないわよ!ギーヴレイとかって人に命じられて集めたって、エルネストが白状したんだから!!」

 「は?ギーヴレイ?エルネスト?」

 「なんか私たちに似た子を集めさせられたって!!」



 ………ああ。

 そういうことね。


 あー吃驚した。てっきり、俺の知らないところで部下たちが生贄用の生娘たちを集めてるとか、そんな恐ろしい勘違いをするところだったよ。



 「なんだ、そのことか」

 安堵する俺と反比例して、アルセリア(と後ろの二人も)の怒りゲージがさらに充填される。

 「なんだ…って、どういうことよ?そもそもアンタ、そ……そ、そういうことを平気でするわけ?」

 「いやいやいやいや、してないよ、今回は」


 こいつらを彷彿とさせる娘たち相手に、狼藉を働けるハズもあるまい。こいつらは多分分かってないだろうけど。


 「………()()()…………?」

 

 あ、やべ。口が滑った。


 「じゃあ、何?そういうことをしたこともあるって言うわけ?」

 「ちょい待ち!あのな、一つ言っておくけど、で、お前ら多分ほとんど忘れてると思うけど、俺、魔王なわけ!」

 「そんなこと知ってるわよ!」

 「だったら別に変な話でもないだろ!?」



 魔界だろうが地上界だろうが、そしておそらく天界だろうが、王の傍に愛妾が侍るのは珍しいことでもなんでもない。無論、無理矢理に連れてくるようなことは言語道断だが………いや、以前はそういうことがなかったとも言い切れないが………大抵は、王の相手を命じられれば喜んで身を差し出す者が多いんだよ?

 何しろ、王の愛妾ともなれば生活の保障は勿論、その寵愛程度によっては国のNO.2のように振舞うことだって出来るようになるわけで。


 少なくとも、外野にとやかく言われるような問題じゃない………はず。



 「へーえ。開き直るつもり?」

 

 なのに、なんでアルセリアこいつは怒ってるんだよ?

 もう、訳が分からん!こいつら自身に手を出したってんならいざ知らず、俺は三人娘には誓って不埒なことはしてないぞ!



 「いや……開き直るも何も………とにかく、何もせずにあの娘たちにはお帰りいただいたんだから、それでいいだろ?」

 「……本当に?」

 アルセリアの疑惑はなかなか薄れない。


 「本当だって。つか、お前らに似た連中に欲情するとか、ムリ!」

 疑り深いアルセリアを納得させるには、どう話せばいいのだろうか。



 「第一、俺の好みはもっとこう……大人な感じなの!色気もへったくれもないツルペタンには、興味がない!」


 本当のところ、それだけではないのだが、彼女らを安心させるにはこのくらい言っておいた方がいいだろう。

 第三者的に考えれば、お年頃の少女にとって、行動を共にしている男の性的嗜好に自分たちがどストライクなのかもしれない、というのは、結構怖いことだ。


 彼女らは勇者であり、そこいらの男ではまるで敵わないかもしれないが、何しろ相手が魔王となると、力づくで来られると抵抗のしようがない。


 もし彼女らがそういった危機感を抱いているのであれば、今後のためにもそれを払拭しておかないと。



 そう判断したからこその発言だったんだけど…………あれ?

 なんか………余計、表情が怖くなったんだけど…………怒りの種類が、ちょっと変化したような感じもするけど…………



 「……陛下。陛下は今、地雷原でタップダンスを踊っていらっしゃる状況です」

 

 エルネストが耳元で、そんな風に状況を説明してくれた。非常に、分かりやすくて助かるのだが。



 「えええええ?なに、俺、マズいこと言った!?」

 自分の置かれている状況は分かった。が、原因が分からなくては対処が出来ない!


 

 アルセリアを余計に怒らせてしまったことは分かる。が、何でだ?心配要らないよって、そう言ったつもりなのに。

 一体、どう言えば良かったんだよ??



 「ふ……ふーん………そう。ツルペタには、興味ないわけね…へぇ、そう、こっちもアンタに変な目で見られてなくて助かるわ……」


 ほら、口ではそう言ってる。助かるって、言ってる。

 なのに、なんで口元が引きつってるの?



 原因は分からないが、覚悟を決めるしかあるまい。

 またもやスマキか、はたまた………



 「まぁ、あれよね。勇者と魔王が慣れ合ってるってだけでも変な話だものね。これ以上距離感がおかしくなるのも、避けた方がいいわよね」



 ……………………あれ?

 アルセリアが、何もしてこない………?


 そのまま、自分の部屋に引っ込んでしまった。



 え………何?余計に怖いんですけど………



 残されたベアトリクスとヒルダも、

 「リュートさんの言いたいことは、よーく分かりました。貴方の基準では、私たちはツルペタなのですね?」

 「…………平地だって、いいじゃないか……………」


 

 いやいやいやいや、別にベアトリクスはツルペタとまではいかないと思う……よ。まあ、ボンキュッボンというにはやや控えめだけれど……



 しかしそう言うのも藪蛇のような気がしたし、ヒルダに至っては正真正銘の平地なので、何も言えない。

 

 俺がまごまごしているうちに、二人とも(何故か)俺に軽蔑の目を向けてから、アルセリアの後を追いかけて部屋の扉を閉めた。




 ……………なんで?

 これ、俺が悪いのか?



 救いを求めてエルネストとディアルディオの方を見たら、ふいっと目を逸らされてしまった。



 俺、孤立無援の大ピンチ……かもしれない。


実際リュート氏…というかヴェルギリウスの好みは大人系美女ですけどね。ストライクゾーンは結構広いですよ。

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