2-55. 考えたことなかった!!
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毎日スタンツと体術の練習をしてその後敷地内を1周走ってたまにランと妹たちと遊んだりして1週間はあっという間に過ぎ去ってしまった。
今年の夏季休暇は初秋の月の1日が土曜なので2日までだが僕らは今日王都に戻ることにしていた。明日は土曜日だし休日に移動するよりは平日に移動をした方が道が空いていて馬車での移動時間を少なくできると思ったからだ。
「お母さま。またしばらく家を空けますがお元気で」
「ええ、グリムも元気で」
軽い抱擁をして母との別れの挨拶を済ます。
「お兄さま、また帰ってきてね。まってるから」
「まってるから」
2人が僕に抱きついてくる。このまま連れ帰っちゃダメかな。王城にも屋敷はあるんだしそっちで生活すればいいじゃん。しかしそうすると母が領地で1人になってしまうから無理なのは分かっているが寂しい。久々に過ごした実家での生活が幸せすぎた。
「うん。必ず帰ってくるよ。2人に会えなくなるなんてお兄さま寂しいよ」
「ミリムのがさみしいよ」
「リリムもさみしいよ」
王都に帰りがたい。馬車には既に挨拶を済ませたランとスタンツが乗っていて僕待ちである。
後ろ髪を引かれる思いで馬車へと乗り込んだ。馬車にはランとスタンツが正面に向かい合って座っていたのでスタンツの横に座る。
動き出す馬車の小窓から見える母と妹たちに手を振りながら別れを惜しんだ。
道が空いているとかより1日でも多く妹たちと過ごせばよかった。
「グリム、名残惜しいのは分かるけどもう見えないだろ」
ある程度馬車が進んでから声をかけられる。
「しょうがないですわ。グリムはシスコンですもの」
「別に僕はシスコンじゃないよ。家族を愛するのは当然でしょ?」
「あらあなた、クラウスおじさまにも同じ態度でしたっけ?」
「認めよう。僕はシスコンです」
今まで考えたこともなかったけど僕ってシスコンだったみたい。言われてみれば父への態度と妹たちへの態度ではまるっきり違う。同じ家族なのに。
「ランだって下が出来れば僕の気持ちもわかるよ」
今のところランは一人っ子なのである。
「そうですわね。それももうすぐですわ」
「へぇ。ランさんもうすぐ弟か妹ができるんだね?」
「ええ、結構楽しみですわ」
門を潜ってアズニエル家の敷地内を出る。
閉じられた門と塀をぼんやりと見送った。