8. 魔力値0で呼び止められました!!
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またまた僕はぼーっとしてる間に全員分の測定が終わり本日は解散となった。
しかし今回はほっとしたわけではない。
これからの学園生活を案じてだ。
あの先生たちの反応を見るとどうやらあまりよろしくはない結果らしい。まぁそもそも魔法という授業科目があるこの学園でまさか魔力値0の生徒がいるとは思うまい。
一応、また配慮してくれたのかガストール先生にこっそりと呼び止められた。スタンツには先に帰ってもらった。
「あー、言い難いんだがグリム。お前の魔力値は0だ。この学園には魔法という授業科目もあるし魔力値0のお前がこのままこの学園に居たらもしかしたらツラい思いをするかもしれない。ご両親にも相談して転校手続きを取ることも出来るかもしれない。とりあえずお前の意思を聞きたいんだがまだ入学2日目だ。転校するなら今かもしれないぞ。どうしたい?俺は正直教師になって10年足らず魔力が少ない魔法が弱い、苦手だというものには対峙したことがあるが魔力値0の生徒とは出会ったこどがない。上手くフォローが出来ないかもしれない。ただ、お前が学園に残りたいって言うんであれば俺は最大限お前の味方であることを誓おう」
ガストール先生は乱雑な雰囲気ながらも優しい言葉をくれた。
この学園では先生にすら僕の身分は明かされていないにも関わらずだ。身分の上下を気にするのは子供よりも大人なのだ。そして子供はとても敏感で大人のちょっとした態度で何かを察してしまう。そういったことがないように担任であるガストール先生にすら僕の身分は知らされていない。
「先生、僕はこの学園に残れるなら残りたいです。まだ2日ですが僕にはこの学園でもう友達ができたんです。幼なじみも居ますし2年後には僕の可愛い妹が入学するんです。それに優しい先生も居ますし」
ちょっと照れくさいけど本心だ。
ランのように綺麗な笑顔とはいかないけど照れながらも笑ってみた。
「そうか」
僕の頭に手を乗せワシャワシャと撫でてくれた。
「じゃあこの件は先生が学園長先生に話しておくな」
「その必要はないぞよ」
ふぉふぉふぉという笑い声と共に講堂のドアから学園長先生が現れた。
「学園長先生。なぜここに?」
「実は補助魔法士のリッツ先生から連絡をもらってのぅ」
ガストール先生と会話したあと学園長先生は僕を見て聞く。
「君がグリム君かの?」
「はい、あっいえ。僕の名前はグリームです」
少し目を細めて学園長先生は僕を見る。
「グリーム君は学園に残りたいのかの?」
「はい、僕はもし許されるのであれば学園に残りたいです」
「そうか、ではそうしようかの。グリーム君は寮に戻ってよいぞよ」
学園長先生はふぉふぉふぉと言ってあっさりと僕の学園在留が決まった。
「ありがとうございます。失礼します」
僕は嬉しくてそのまま階段を駆け上がり講堂を後にした。
「いいんですか?学園長先生?まだ確認もしてないのに」
「よいんじゃよ、ガストール先生。よく考えてみたまえ。両親に確認しようにももし彼が平民の子ならば学ばせるためにもこの学園に通わせたがるだろうし貴族の子でも人脈のためにこのまま学園に通わせるじゃろう。結果は同じなんじゃよ。問題は────」
あー、学園長先生賢い。
そういえば僕この学園に通う慣例のある家の生まれだったわ。
なるほど。さすがに学園長先生ともなれば僕の素性は知っているだろうしね。両親に確認するまでもないのである。
そんなことを思いつつ僕は講堂を後にする。