7. 魔力値測定、配慮はされています!!
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ああ、ついにやってきた魔力値測定。どうやら皆で講堂に移動して一人一人道具で数値を測るらしい。
はぁ、気が重い。
「そんな気に病まなくてもすぐ終わるって」
スタンツが僕の気も知らずずっと暗い顔をしている僕にそんなことを言う。
まぁそうだよな。僕の気も知らずと言うが知られている方が驚きだ。そんなことができるのはテレパシーでも持ってないと不可能だろう。僕はテレパシーは持っていないし残念ながらスタンツも持っていないと思う。それともそういう魔法もあるのだろうか。
「まぁ、そうだよね。自己紹介も終わったことだしさっさともう1つのイヤなことも終わらせるか」
講堂に移動したあと僕らは先ほどの席順通りに並ぶ。
席順がそのまま出席番号になったらしい。
今回もランから順番に測定が始まる。
講堂には教室とは違い一人一人机がなかった。その代わり長机と長椅子があり横に4人くらいなら1つの机と椅子に収まって座れた。入学式をやった建物だけあって机と椅子が余りまくっている。
大学の講義室のように階段上に設置された机と椅子。その1番下の部分に先生たちが立っている。
「えー、いいですか。皆さん。皆さんには今からこの仕切りの中でこちらの魔力値測定器を用いて魔力値の測定をしてもらいます」
丸くて白い球体に数字のついた地球儀のような物を魔法士の先生に見せられる。横にはガストール先生も居る。
「これにはメモリに数値と色で得意属性が出る仕組みになっています。魔力値が低い子もあまり落ち込まないように。君たちは1年生だからいくらでも可能性はありますから。じゃあ1人目からどうぞ中へ」
一応配慮されているらしい。測定する場所は布で仕切られ中が見えないようになっている。
パァーッと赤い光が漏れてきた。配慮はされているが一応だけらしい。
えー、なんなのこれ。仕切りがあるのにこんなに光が漏れるなら僕公開処刑じゃん。
だって僕絶対光らないよ?
えー、えー、と思っているとランの次から3人は光が漏れてくることもなくどうやら光は魔力値と比例関係にあるらしい。
そしていよいよ僕の番。
「行ってらっしゃい」
「うん、頑張る」
きっとスタンツにはわからないだろうけど僕は意気込んで仕切りの中に入る。
中にはガストール先生と魔法士の補助の先生がいた。
「じゃあグリム。魔力値測定器に手を触れて魔力を込めてみろ。魔力の込め方は手先に意識を集中する感じだ」
ふむ。
言われた通り手を触れてみる。
瞬間、
「…っ!!」
「…っ?」
「…っ?!」
僕を含めて全員絶句。
「えーと、先生。これで戻っていいですか」
一応測定を終わったであろう測定器から手を離しガストール先生に尋ねる。沈黙に耐えられなかった。
ガストール先生と魔法士の先生が目を合わせ記入用のボードで口元を隠し僕の前で堂々と内緒話を始めた。
「いや、しかしこれは」
「こんなことがあるとは」
ごにょごにょ聞こえてくる。
「えー、グリム。とりあえずもう1回手を触れてみてくれ」
先ほどと同じように僕は魔力値測定器に触れてみる。
やはり先ほどと同じ結果が出た。
僕が手を触れた魔力値測定器は真っ黒になった。白かった球体がまるで壊れたかのようにブラックアウトしたのである。属性が出るはずの球体は黒くメモリは0を示していた。
先生たちは絶句。
そこも含めて先ほどと同じ結果だ。
こうなるであろうことがわかっていた僕ですら先ほどは絶句したのだからしょうがない。
「もう、戻ってもいいですか?」
「あー、そうだな」
2度試して結果が変わらなかったのでようやく戻る許可が降りた。
「なんか長かったね?」
スタンツに聞かれる。
「あー、まぁね?」
僕にもなんて答えればいいのかわからない。
魔力値0で測定できないっていうことまではわかっていたけれどその後どう対処すればいいのかがわからないのだ。
数値が異常に大きいとかならちょっと力を抑えればいいだけだけど一切ないのである。