2-40.暇なんです、僕!!
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今日は皆で料理の練習をするらしい。僕は味見役を任せられたが要するに完成するまではどこかで暇を潰せとのお達しだ。
「せめてジークが居てくれたらな...」
ジークが居たら特訓に付き合ってもらえて僕だけ暇を持て余すなんてこともなかったのに。いや父だけでも居ればこんなにも疎外感を感じることはなかっただろう。僕1人だけ参加出来ないというのが寂しいのだ。
それにしても何をしようか。いつもの日課になっている内周を走りながらに思う。料理が完成するまで走る体力もないしすることがない。
この世界暇潰しの方法が少ないのだ。電気がないからゲームやテレビがなく小さな子供は友達と遊ぶしかない。僕はというと妹たちと遊ぶくらいしか今までしていなかった。
ただでさえ塀で囲まれた家なのに小高い丘に建っており民家まで少しだけ距離がある。そして五大家は五つに分割された領地を持っている領主でもある。街に出ても領主の息子である僕とは遊んでくれない。逆に僕が街の子供でも何か起きたら面倒だから遊ばないだろう。
そう考えると学園の理念は素晴らしいものだった。身分の上下なく友達がほしかった。住み込みの使用人は独り身が多く家族がいる使用人は街に家があり通いで仕事をするためよくある使用人の子供で一緒に遊ぶということもない。むしろ街で会うと彼らの子供こそ僕を避ける。顔バレしているし当然だろう。
何不自由なく暮らせているのだしないものねだりというやつなのだろう。
しょうがない、宿題でもやろうか。
夏季休暇も残り2週間を切ったし最後1週間はスタンツが来るから宿題を終わらせておこう。
そしてスタンツに遊んでもらおう。
うん。やる気出てきた。
内周を走り終え屋敷に戻る。まずは自室に向かい着替えを取りに行ってからお風呂に入ろう。汗を洗い流したらちょっとだけ調理場を覗いてみようかな。
追い出されてからあまり時間が経っていないから何も出来ていないだろうし味見役としてはまだお呼びではないだろうからやっぱり大人しく自室で宿題をしておこうか。
ランは何となくあたふたしているところが想像つくが妹たちはどんな感じなんだろう。料理が作れなくてもミリムは堂々としているだろう。リリムは少し自信なさげにしかしミリムと同じような態度を取るんだろうなと何となく思う。
一番想像ができないのは母の態度だな。母が料理を作るところすら見たことがないが普段作らないだけで作れるらしい。
おふくろの味というものを覚えるよい機会だ。
僕が今のところ覚えている味はお抱えシェフの味だし。