2-32. ボロボロ!!
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僕はもうボロボロである。もちろんジークは僕の体に傷一つつけたりはしない。
精神的にボロボロなのだ。
僕は正直魔法の無効化と前世から持ち越した超能力で無敵なのではないかと思っていた。
魔法攻撃は効かないし僕には超能力があるからこの世界のほとんどの人に勝てると試してもいないのに思っていたのだ。
超人。
何これ。何この老人。もう本当に超人という言葉が相応しい。ギフトを使おうにも目視ができないのである。瞬きした瞬間に移動したという言葉を信じたのに瞬きしなくても消えましたよ。
曰く、飛んだだけらしい。視界から消える程飛ぶって何なのさと思ったらそこには風魔法を使ってはいるらしい。対人に使わないって言っていたのに。まぁでも魔法なしで数m飛ぶ身体能力じゃなくてよかったけれども。
上に気を取られていたら次は子供の僕の目線よりも下に潜り込んで攻撃してきたりもう翻弄されまくりである。
さすが過ぎてもう僕は精神的にボロボロなのである。
「それではグリーム様。本日はこれまでということでよろしいでしょうか?」
もちろんよろしいですとも。
一刻も早く精神状態を回復させねばこのままではぐっすり眠れそうもない。結局ギフトを繰り出すこともなく完敗である。
圧倒的に有利な無効化とギフトを持っているのにも関わらず完膚無きまでに敗れたのである。
いっそここまで差があると清々しくさえもある。
まぁ国のトップレベルのジークが9歳児に負けなくてよかったと思おう。負ける可能性なんて微塵もなかったが。
「うん、いいよ。ジークありがとう」
「いえ。それでは私はこれで失礼致します」
そう言ってジークは僕を置いて屋敷の中へと消えていった。
ジークの居住も屋敷内にある。彼のように上級使用人はアズニエル家の屋敷地下に部屋を持っている。
使用人の人数が多いので全員は屋敷に住み込めないが。そのため使用人棟も存在しほとんどがそちらで生活をする。
僕はその場にへたり込んでジークの去っていく背中を見送る。終始構えたまま突っ立っているだけしか出来ていなかったのに体も疲れていることを自覚する。それもそのはず常に身構えていたのだから例えほとんど動いていないとはいえ当然である。
これがあと5日続くのか。中々にハードである。
しかし自分が希望したことである。彼の貴重な休暇の時間を減らしてまで付き合ってもらっているのだ。音を上げるわけにもいくまい。