2-31. 何度でも思う、待ってほしい!!
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僕の構えが完成したらジークも構えた。
「どうぞお好きなタイミングで撃ち込んでくださいませ」
撃ち込む隙なんて存在しないんだけど。そもそも構え教わっただけで撃ち込むとか攻撃方面のこと教わってないし。
「さすがグリーム様でございます。むやみやたらに攻撃してはなりません。目的は逃げることですから相手の出方を見るのが正しいでしょうな」
ジーク相手に先制攻撃するだなんてやけになっていないと無理である。
「ではこちらから参ります」
待ってほしい。特訓なんだからどちらかが攻撃しない限り睨めっこで終わるのはわかる。わかってはいる。だけどまだ心の準備が出来ていない。
待ってほしい。
そんな風に思っている間にも既にジークはこちらに2歩ほど近づいて射程圏内に入っていた。
「グリーム様、ギフトを使ってもよろしいですよ」
いや、言うの遅いよ。
僕は言われた通りにジークをぼんやりと全体的に見ていたがいきなり蹴りを頭の横で寸止めされた。ワイバーンのときと狙い場所は変わらない。拳ですらない。こんなの初心者に避けられるとは思えない。
ギフトを使っていいと言われたときにはもう足を振り上げていた。達人のスピードに間に合うわけがない。
「ではもう一度」
そう言ってジークは2歩ほど下がる。
僕はもう開始からギフトを使おうと思っていた。
「参ります」
そう言われたときにはジークは視界から消えていた。
実のところ僕のギフトにもいくつかの弱点がある。
その1つがこれである。
感知していないものには使用できない。
視界から消えたことによりジークにギフトを使うことができない。
そして僕がジークがどこにいるか感知したとき既に勝敗は決していた。
彼相手に勝敗というのも烏滸がましい。
ジークは僕の真後ろにいた。手は首に添えられている。
「いま何したの?」
「移動して後ろに回っただけでございます」
詳細を知りたいんですけど。
「ジークが消えたように見えたんだけど」
「先程参りますと言った瞬間グリーム様は身構え瞬きをされましたのでその間に移動して後ろに回りました」
待ってほしい。
僕は別にそんなに暢気じゃない。ジークに参りますと宣言されてずっと目を瞑ったりはしない。瞬きした自覚はないが本当に言葉通り一瞬だったはずだ。その一瞬で後ろに回るってもう言葉が出てこない。
「ではもう一度参ります」
だから待ってってば。