2-30. 強くなれた気がする!!
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「まず相手に対して正面を向いてはなりません。正面を向くとそれだけ相手からの攻撃範囲が広くなってしまいますからな。半身で利き手側が後ろになるように立つのがよいでしょう。グリーム様なら左足が前になりますかな」
そう言われて足を開いて左手左足を前に構えてみる。
「足は開き過ぎずに肩幅程度に開くのがよろしいでしょう。手は顎くらいの高さに拳を持ってきて構えるとよろしいでしょう。顎を引いて相手を見据えてください」
僕はジークに言われた通りの構えを取ってみる。なんだかこれだけで強くなれた気がする。
「それが基本の構えでございます。相手が拳を繰り出してきた場合本来なら拳を躱した後魔法攻撃にも気をつけねばなりません。グリーム様は直接攻撃ならば気にせずともよいのですが間接攻撃には気をつけねばなりません。魔法は手の向いた方向から放出されますのでそこに意識を向けながらも全体を見てくださいませ」
魔法が直接効かないというのは1つの不安がなくなるということになる。しかも相手が切り札として残しておいた攻撃魔法が効かないなんてことになれば展開は一気にこちらに傾くことになるだろう。
「相手が武器を持っている場合武器を警戒しつつも他の攻撃にも注意が必要でございます。またナイフを手に持っている場合あえてしっかり握らず軽く握ることにより可動範囲を広げることがございます。見誤らないようにお気をつけくださいませ」
いきなり色々言われても頭ではわかるけど体がついていきそうもない。
「私の場合は対人では体術のみの使用でございます。対モンスターのみ魔法を使うようにしておりますがグリーム様も体術に織り交ぜてギフトを使えばより相手を撹乱させることが可能でございます。拳を繰り出した瞬間、蹴りを繰り出した瞬間にギフトを使えば魔法とは違い手の向きも関係ないので相手はグリーム様のことをなかなかの体術の使い手と見るかもしれませんな。言わなければバレないことはあえて言う必要はございません」
彼が本気を出さなければいけない人はあまりいないのだろう。魔法を使ったとはいえ8〜10m級のワイバーンを一蹴できる彼が人相手に魔法を使う必要があるとも思えない。
「本来なら対峙しない努力をまずはして頂きたいのですが戦闘になったら致し方ありません。人体の急所は体の中心部に線を引いたところにあると覚えておいてくださいませ。頭部、眼窩、人中、顎、喉仏、胸と上げていったらキリがないくらいに急所がございます。ここに一撃を入れられたら追ってこられないのを確認して逃げてくださいませ」
逃げるが勝ちなのはわかるけどそこまで追い込んで逃げるのもなんだかもったいない気がするが侮ると痛い目をみることになりそうだしやはり逃げるのが正解なんだろう。
それにこれだけ口酸っぱく言われているのに万一逃げられる状況で向かっていって危害を加えられたり捕えられたりしたら目も当てられない。