2-28. 無効化!!
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その後もジークに付き合ってもらい様々なパターンを試す。火魔法で紙を燃やしたり風魔法と土魔法を複合して石礫もどきを発生させてみたり容器の中に入ってそこに水魔法を使用したり暗い部屋で光魔法を使用してもらったり。僕が思いつく限りのパターンをジークに手伝ってもらって試してみた。
やはり放たれた魔法は効果がないもののその後の副産物は僕にも影響があることがわかった。大規模魔法を使われたら間接的に攻撃を受けることがありそうだ。
「グリーム様のその能力はなかなかに便利ですな。無効化能力とでもいいますか」
無効化。確かにこれはそう呼ぶのが相応しいのかもしれない。無効化能力と言われると能力は要らないと言った手前違和感を覚えるが。
「便利ではあるけどこれが役立つのは防御のみだよね」
「左様でございますな。如何でしょう、もしよろしければ夏季休暇の間だけでも私が体術をお教えいたしますが」
「なるほど。確かに僕が鍛えなきゃいけないのは体術なのかもしれない。あとはギフトもだよね。魔法を無効化できるんだから体術やギフトで何とか切り抜けられる場面もでてくるよね」
魔法を無効化できるのなら相手から受ける攻撃は物理攻撃のみになるがギフトを使ってもいいなら大人にだって負けないだろう。あとは純粋にワイバーンを一蹴してしまったジークの体術に興味があるのだ。
「では決まりですな。私はあと1週間も居りませんがその間だけでもグリーム様に体術をお教え致しましょう」
そうだった。父さんの夏季休暇は1週間でジークは父さんと行動を共にしているので今日を入れても6日しか領地には居ないのだ。
それでもジークに教わっておいて損はないだろう。
彼にとっての夏季休暇が存在しないことに申し訳なく思いつつもこんな有難い提案を蹴ることがもったいなくてできない。アズニエル家はブラック労働環境のようだがジークは給料よいと思うのでセーフだろうか。アウトのような気がする。
「うん。お願いね、ジーク」
それでも僕はジークに師事することを決めた。
アズニエル家最強の執事。それはこの国においてもトップレベルの戦闘力を誇る。そんな彼に教われる滅多にない機会を逃したくはない。
ブラック労働には気づかないフリをしよう。
うん、僕まだ子供だしね。