2-19. ワクワクする!!
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そこいたのはワイバーンだった。
幸いにして1体しかいなかったが如何せん大きい。
僕らの旅路に御者はいても警護はいない。
そんな必要はないからだ。
「ここはお任せを、旦那様」
馬車の扉を開けてジークが出ていく。
ジークが常に父と一緒にいるのは別にお目付け役というわけではない。
彼こそが父の護衛なのである。
僕が見た中で一番大きいワイバーン。8〜10m級だろうか。それはもうドラゴンと呼んでもいいような、でも確かに2足に2翼で生物学上はワイバーンと称される個体であった。
ジークが出ていった扉から僕も出ていく。父は一切動じずジークに任せておけば大丈夫と言っていた。僕が出たのも別にジークの心配をしたわけではない。ただ純粋に気になるのだ。9歳とか14歳とか18歳とか関係ない。男なら気になるだろう。あんなに大きなモンスターとどう戦うのか。
少しの時間溜めの時間が必要だが魔法攻撃もあるだろう。ジークがどう戦うのか僕はワクワクしていた。
ジークが戦うところを初めて見るのだ。
基本的に危険な目に会うことすらない。今回だってモンスターはほとんど出ない整備された道だった。このワイバーンは1体だけだしはぐれワイバーンなのだろう。
ジークは真っ直ぐにワイバーンに向かっていく。
んん?魔法攻撃をするなら別に近づく必要はない。不思議に思っていたが馬車との間に入ったときに僕らの身の安全を確保するためにあえて近づいたのだと理解した。ワイバーンにどんどん近づいて結局正面まで辿り着いた。
この後どんな魔法を使うのだろう。ジークの属性も知らないし何を使うのか楽しみだ。
そんな風に思っていたのにジークはワイバーンの前でジャンプした。
それはジャンプというにはあまりに高くワイバーンの頭まで飛び上がる。そのまま頭部を一蹴する。文字通り一蹴である。
人間が蹴ったとは思えないズドンという音ともにワイバーンは倒れた。
まさかの肉弾戦。いや多分ジャンプの高さ的に風魔法を使ってはいるのだろうがそれでも一撃で倒すとはさすがとしか言えない。
僕は走りよって行ったがそれをジークに止められる。
「来てはなりません。坊ちゃん」
それはワイバーンが倒れてはいてもまだ危ないから来てはいけないという意味ではない。僕はジークがそう言ったことの意味をすぐに理解する。