2-17. 暇なんですか、お父様!!
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ノッカーさんの一言により解散できた。
ティアナさんはまだちょっと時間あると言っていたがもう疲れたので解放してもらった。彼女を振り切るのにも労力を使うので勘弁してもらいたい。
僕は起こった現象について考えようと思っていたが毎週のごとくやって来る父と遭遇した。
「やぁ、グリム。今日も元気にしてるかい?」
「こんにちは。お父様。僕は元気ですよ。お父様もお元気そうで何よりです」
毎週毎週遭遇するが一体いつから待ち構えているのだろう。解散時刻も日が暮れる頃までと曖昧で正確には決まっていないというのに。
五大家の一家当主がそんな時間があるとは思えないのだが。家族をこよなく愛する父だが王都には僕しかいないのでその愛が一点集中している。
暇じゃないのはわかっているけど暇なんだとしか思えない。
「はぁ。相変わらず僕の息子は気配りもできて完璧だな。そうは思わないかい?ジーク」
「は。左様でございますな、旦那様」
もう毎回のやり取りでジークに申し訳なく思う。
左様以外の返答は立場上存在しないのだから聞かないでほしい。
「そういえばお父様。折り入って相談があるのですが」
先程の現象について相談したい。
「ん?なんだい?保険のことかい?上手くいってるよ」
それも気にはなっていたけれど上手くいってるならよかった。
兄貴とガランにはあれ以来会っていない。彼らの罪はとても軽くなり懲役刑ではなく罰金刑になったらしい。分割払いではあるもののきちんと定期的に納めているらしい。何よりも罰金刑になったことにより治療中の母についていてあげられるのがよかったと思う。
「それがですね、できればお時間頂きたいので夏季休暇にでも時間を空けて貰えないでしょうか?」
そう。早く相談したいけど僕いま私用外出禁止なんだよね。家族にならあの現象についても相談できるのだけどあと1ヶ月ほど我慢だ。誰の目があるのかもわからないところでは相談できない。研究所から学園側の門までは何もないけれどティアナさんやノッカーさんに聞かれる可能性はないとは言えない。
王都の屋敷に行くには時間がない。相談だけならできるかもしれないが検証の時間が取れないのだ。
「もちろん。愛するグリムのためならどれだけでも時間を確保しよう」
「2時間くらいで大丈夫です。できれば領地の方の屋敷でお会いしたいです」
「大丈夫。グリムの夏季休暇のときに1週間くらい一緒に帰る予定だから」
いま聞きました。じゃあ馬車の中で相談しながら実家で検証実験を手伝ってもらおうかな。
領地の屋敷には馬車で結構な時間がかかる。王都を出ればすぐに領地ではあるもののそこから屋敷に辿り着くまでが長いのだ。こちらの世界には新幹線や飛行機が存在しないのだから時間がかかるのも当然である。