2-14. 賛同しかねる!!
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トレーニングルームと呼ばれたその部屋は全ての面を耐火、耐衝撃素材で作られていて水魔法への対策として排水も完璧らしい。ただ土魔法は使用禁止みたいだ。土魔法は屋内で使うと対処のしようがないもんな。
広さは学園の教室と同じくらい。その部屋にはほとんど何も無く鉄塊があるのみだった。
「これは成人男性1人分と変わらない重さの鉄塊だ。それを10個ほど用意した。1個ずつ持ち上げてみてほしい」
「その子先週あたしを持ち上げてるから1人分は持ち上げられると思う。まだ余裕もありそうだったよ」
どこまで持ち上げられるのか。正直自分でも把握していない。前世でもほとんど力を使うことはなかったから。
「そんなことよりこれ終わったらあたしの方の研究してもいい?」
「いや、今日は自分の研究をする時間だ」
「えー、じゃあいつになったらグリーム君の魔力の研究できるの?ギフトの研究よりよほど有意義な時間だと思うんだけど」
「ギフトの研究も大事だ。それこそ彼のギフトがどれほどのものなのか確かめることによって有効性の証明にもなる」
「それがね、この前わかったんだけど彼の能力はギフトだけじゃないんだよ。魔力値0の汎用性は与えられたギフトよりも大きいかもしれない」
何か口論しているがもう無視をする。彼らが会話をしている間に1個、2個、3個と鉄塊を持ち上げて全ての鉄塊を持ち上げる。ついでにノッカーさんとティアナさんを持ち上げたところで彼らがようやくこちらに気づく。
「すごいな。10個の鉄塊と大人2人合わせて1トン近くあるだろうに」
「確かに凄いけど彼の凄いところはこれじゃないよ。彼はやはり魔法を使うものと対峙させるべきだと思う。このトレーニングルームでなら攻撃魔法も使えるしやっぱり試してみようよ。そうだな。ギフトの研究もしたいなら魔法対ギフトの構図なんかも面白いかもれない。そうだよ。それ面白そうじゃんか。やってみない?ノッカーさん。元々用意していた実験はもう終わっちゃったんだしさ検証してみようよ」
「確かに気になるな。やってみるべきか...」
思案げにそう言われても賛同したくない。
ノッカーさんがティアナさんのストッパーをしてくれるかと思いきや探究心に逆らえない大人がまた1人増えただけである。
「いや、その前にグリーム君。鉄塊をどれだけ自由に動かせるか左から順に交互に上下させてみてくれ」
浮いたままのノッカーさんにそう言われた。先週と同じく気にも留めない彼らにいたたまれなくなって床に下ろす。
10個の鉄塊を交互に上下させる。遊び心でウェーブもさせてみる。10個を同時に持ち上げるのよりも交互に上下させるのは難しい。例えるなら右手と左手で別の動きをしているような感覚か。
「凄いな。自由自在か。もっと多くの鉄塊を用意するべきだったか。しかし元来魔法では1個の鉄塊すら容易には浮かせられないものを10個も自由自在とは思わなかった」
「ねね。これだけ凄いんだから攻撃魔法と対決させてもグリーム君なら何とかなるんじゃないかな?」
そんな憶測でものを言わないでほしい。
「まぁ興味深くはあるな」
先々週まで淡々と無難な情報を収集していたノッカーさんがティアナさんに引っ張られている。
「もうわかりました。それやる前に疲れたんでちょっと休憩させてください」
子供が大人2人の流れには逆らえない。
諦めて受け入れる代わりに休憩を要求した。