2-7. 偶然って4回も続くんですね!!
□□□□□□□□
何でだろう。彼女と一緒にいると今世で一番の身の危険を感じる。
命の危険というわけではなく身の危険を。貞操の危機というわけではなく文字通り身の危険を。とても酷使されそうな予感がするのだ。
魔法科の部屋を飛び出し急いで王立研究所を出る。
歩きながら首から下げていたランから貰った飴を食べる。
建物を後にしてホッと一息ついてゆっくり歩き出したとき僕は油断をした。
「そこを歩くのはグリムじゃないか?」
僕をグリムと呼ぶ王城内部の人物。そんな人物はほとんど居ない。
「はい。そうですよ。お父様」
そこに居たのは父、クラウス・フォン・アズニエルと付き添いのジークだった。
「偶然だなぁ。私用外出は禁止だけど帰り道に偶然会っちゃったのはしょうがないよね?」
白々しい演技をする。
実を言うと申し訳ないことに僕は父という存在が苦手である。前世では疎ましく思われていたため逆にここまで愛されるとどう接していいのかわからないのだ。
偶然会うこと4回目。僕が王立研究所に通う度に父に会う。今週こそはちょっと避けようとも思っていたのにそれどころではなかった。
「ちょっとの時間とは言え離れて暮らしてる息子に会えるのは嬉しいよ」
少し照れながらも真っ直ぐに僕にぶつかってくる。
彼を見ているとなんだか申し訳ない気持ちになる。
前世の父のせいで接し方が分からず上手に甘えたり頼ったりできないことに。
僕が王立研究所に通うきっかけになったあの事件も父に解決して貰ったのに素直になれない。
そんな僕でも愛してくれる無償の愛が重いのだ。
「グリムは偉いなぁ。毎週奉仕活動をしてるんだもの。僕の息子にしては出来すぎだよ。そうは思わないかい?ジーク」
「は。左様でございますな、旦那様」
「でもまだ子供だからね。寂しくはないかい?パパの胸に飛び込んで来てもいいんだよ?」
「あ、もう行かなきゃ衛兵さんの仕事を増やしちゃうんで」
王城側の衛兵はとても仕事熱心なので時間を過ぎると連絡をして探し回ってくれる。
僕は父から逃げることしかできないのにそれでも父は嬉しそうなのである。
愛が重い。