3. 本日から寮生活、パパには言いつけられません!!
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アズニエル王国の中心部にあるアズール学園。
アズニエル王国は五角形に近い国土を五等分した領地を五大家が治め、中心部に王都があり王都の中にアズール学園がある。
そして五大家の子息子女が通う慣例であるこの学園は周囲をぐるっと塀で囲まれて門扉には門番が立っている。
石壁で見上げるほどの高さ登れるのは忍者くらいではないかと思える周りをさらに5メートルほど池が張っていて桟橋がなければ本当に孤立する。
常駐する警備の騎士は100人はいるらしい。
ついたあだ名が陸の孤島。敷地の中央ほど塀から遠く安全なため中央に学園校舎その奥に女子寮3つ、さらに奥に男子寮1つである。
門から1番遠い位置にあり塀からは近い
。女子寮の方が安全な位置にある。
なんとも紳士的だ。
まぁ僕が小耳に挟んだところによると女子寮は足りなくなり新しく出来たらしい。
そりゃ女子の比率考えたらね。
女子寮の方が多いよね。
伝統があるのはあくまで男子寮だとも聞いたけど。
校舎を出て女子寮を通って来た僕らは女子寮の豪奢さとつい比べてしまう。うん、確かに伝統ありそう。
少しぼろ…もとい年季の入った雰囲気を醸し出している男子寮は初・中・高合わせての男子寮である。3学部合わせても女子の1学部より人数が少ないのだからしょうがない。
「ここが今日から僕たちが暮らす寮かぁ。なんだかわくわくするね。ねぇ、グリム。ちょっと探検してみない?」
「そうだね、ちょっと気になるよね」
探検。男の子にはとっても魅力的な言葉だ。
建物中央にある玄関から入ると正面には階段左右には部屋がいっぱいあった。
「オレたち何階なんだろう?どこなら勝手に入っていいかな」
笑顔で僕の方に振り向きわくわくが抑えられないスタンツに
「君たちが勝手に入っていい部屋は自室と共同スペースだけだよ」
と声がかけられる。僕らの正面にヒューイットの首根っこを掴んだ上級生と思わしき人物が居た。どうやら彼はここでも何かをやらかしたらしい。
しかし僕らよりも教室を後に出たのに移動が早いな。
途中少し迷ったから追い抜かされたのか。
「ボクを誰だと思ってるんだ。パパに言いつけてやる」
「ヒューイット、やめなよぉ」
上級生の後ろに先ほど教室に居たクラスメイトが居る。ちょっと太ましい体にくるくるの黒い髪の毛。気の弱そうな少年である。
サラッという効果音が聞こえてきそうな上級生とは対照的である。色も彼は黒、上級生は白に近い金だ。どちらかというとヒューイットと上級生のほうが似ている。
「僕は高等部2年で男子寮の副寮長をしているセイス。君たちは?」
「えっと、オレたちは初等部1年火組のスタンツとグリムです」
スタンツがわくわくの勢いそのまま僕の分まで名乗ってくれた。僕の名前グリムじゃなくてグリームなんだけどまぁいいや。
「ふむ、君たちが残りの火組か。1クラス4人しか男子が居ないので君たちの部屋は必然的に決まったな。このヒューイットとポルトがもう部屋に入ってしまったのでね。そこを彼らの自室にすることになった。本当はクラスごとにくじでも引いてもらう予定だったんだがまぁ仕方ない」
お、ヒューイットのおかげでスタンツと同室になれた。まさか彼に感謝することになるとは。
「一応相性が悪かったり諸事情があれば部屋替えもできるが希望はあまり通らないと思ってくれたまえ。共同生活で我慢することを覚えてもらうのも君たちの親御さんの希望だと言うことを忘れるな」
そう言って副寮長セイスはヒューイットから手を離した。