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32. 肩ポンッ、何かを悟られた!!

 

 □□□□□□□□


「あー、もう心配したんだからな」


 寮に戻り部屋のドアを開けるとスタンツが開口一番にそう言って僕にヘッドロックをかける。実際にはヘッドロックをかけるつもりはなかっただろうがスタンツはクラス一大きいので手足が長く肩を抱こうとしても肩の高さ的にヘッドロックになってしまったのだろう。

 もしかしたらヘッドロックを最初からかけた可能性もあるけど。


「君なんで1人だけ帰ってこないのさ」


「ぼくのせいでごめんね」


 ヒューイットとポルトも居た。

 きっと露天商について行ったことを気にしていたのだろう。確かにあの時ついて行ったのはポルトだがそのあとに大丈夫だと判断して追従したのは僕だ。

 そして3人を宿屋に預けたときいくらでも一緒に帰れたのに帰らなかったのも僕だ。


「心配かけてごめんね。ポルトのせいじゃないからね」


「ごまかすの大変だったんだぞ」


 僕は3人を宿屋に預けるにあたってヒューイットの母に門限を破ることを適当に誤魔化しておいてほしいと伝えるようにお願いした。


 実は起きてからランと養護教員にしか会っておらず門限破りに対してどんな処罰を受けるかわかっていない。


 それでも僕が帰って来ないことをこんなにも心配してくれる友達がいるっていうのは幸せなことだ。


 こんな感じに心配してくれる友達が前世にはきっと居なかったのだ。僕が一方的にそう思っていただけかもしれないからきっとと言うけれどほぼ確実に居なかった。あ、あの人いつの間にか居ないんだ。心配だね程度の知人しか。


 僕の能力は前世からあり父母にはバレていた。小さな子供には制御もできず特別な力を自慢したくなるのは当たり前である。

 父は能力に否定的で能力のせいで夫婦仲は悪かった。母は一般的な家庭より少し口うるさい程度ではあったが父は能力ごと僕にも否定的だった。

 母は父よりは僕の味方だったけれど決して外で能力は使ってはいけないと教え育てられた。もちろん僕もその理由くらいはわかる。だけど本当のことを言えない関係は本当には仲良くなれない。


 だからこそ新しく生まれ変わるなら能力はもう要らないと思ったのだ。

 今でこそこの能力に感謝しているが前世では疎ましく思うことも何回もあった。

 だけど皆の元に元気に帰って来れた。

 今世では今度こそこの能力と上手く付き合っていこう。


「ただいま」


「「「おかえり」」」


 3人に迎え入れられこんなにも嬉しいことはない。

 感極まって涙する。


「大丈夫か?怖かったのか?」


「ううん、本当にそれは大丈夫。ちょっと、うん嬉しくて。あのね、君たちにちょっと聞いてほしい話があるんだ」


「うん?どうした?やっぱり何かトラブったのか?」


「ううん、今回の件は解決したよ。それに関しても後で話すね」


 深呼吸する。涙を拭き覚悟を決めた。


「僕の名前はグリーム・フォン・アズニエル。五大家筆頭アズニエル家の長男なんだ」


 本当のことを言えない関係は本当には仲良くなれない。そう思ったからこそ僕は身分を明かした。

 一時は隠し通そうかと思ったがそういうのは向いてないみたい。


「えーと、あの黙っててごめんね?」


 あんまり反応がなくて困惑する。いきなりこんなことを言ってやっぱり皆も驚いたのだろうか。


 スタンツが悩みながらも挙手をして言う。


「あー、実はなグリム。お前が結構な身分なのは察しがついていたんだ。さすがに王族だとは思わなかったけど」


 んー、スタンツはやっぱり賢くて優しいなぁ。気づいていたのに黙っていてくれるなんて。


「実はボクも途中からそうかなって思ってた」


 ヒューイットがスタンツに続いてそう言った。


「ぼくはヒューイットに聞いてたから。でもぼくたちそんなの関係なく友達だよね?」


 ポルトはヒューイットが言うなら自分も言っちゃおうかなという感じで。


「もちろんだよ。むしろ僕は君たちを本当の友達だと思ったからこそ身分を明かしたんだ」


 ポルトの手を両手で握る。


「僕は君たちと学園の中だけでなくどこに居ても友達で居たいんだ」


 ただ純粋に。疑問に思う。


「ところでどうして僕の身分がわかったの?」


 皆ちょっと言いづらそうな顔をして目配せする。なんでだろう。


「えーと、オレはランさんとのやり取りを見て仲良さそうだなぁと」


「ボクも」


「ぼくはヒューイットに言われて見てみたらその通りだなって思ったよ」


 あー、なるほど。

 新入生代表の挨拶をしたランと仲が良い僕も何となく身分が高そうだと思ったわけか。


 彼女の身分は明かさない。彼女自身が自分の判断でどうするか決めるだろう。ランにはそれができる。


「まぁランとは仲良いよ。ただそれはもちろん友情という意味で。僕らの間には恋愛感情はなく幼なじみなんだ」


 彼女に好きな人がいることは秘密だ。プライバシーだからね。それに女子のそういう秘密を勝手に人に言うと全女子を敵に回しかねない。


「あ、うん。友達。うん。わかったぜ」


 スタンツは何かを納得してくれたみたいだ。悟ったような顔をされ、肩をポンッと叩かれる。


「うん、ボクも理解した」


 ヒューイットも何かを理解してくれた。彼も肩をポンッと叩く。右肩にはスタンツの右手が左肩にはヒューイットの左手が乗っている。


「うん。幼なじみっていいよね。僕とヒューイットみたいだ」


 ポルトの反応を見てるとなぜか落ち着く。ポルトは肩を叩かなかった。彼が叩くスペースもなかったけど。


 僕は最大の秘密を彼らに打ち明けられて嬉しく思う。

 秘密を打ち明けたことではなく打ち明けられる友人になれたことを。


 さてあとは僕の冒険(たん)を聞いてもらうとしようかな。


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