28. 生きてればどうとでもなる、そうその通り!!
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父宛の手紙を認め大急ぎで王城に届けてもらう。父宛だと今日中に父の元に届かない可能性があるのであえて執事長宛にして封筒を二重にする。差出人はここでもあえてグリムと書いた。
執事長にグリムと呼ばれることはないが父に呼ばれているところを横で見ているのでわかるだろうと判断した。
「王城に行きこれを門でアズニエル家までの急ぎの手紙だと渡してほしい。アズニエル家に勤めている人への手紙なんだ」
「わかったぜ。ガラン、行けるか?」
「へい、兄貴」
そう言ってガランは毎度のごとく馬車を飛び出していった。
ガランが戻ってくるまで兄貴と2人だ。
「坊主ありがとな」
「まだ計画は上手くいってないよ」
「ああ、だけど尽力してくれてありがとな」
尽力というほどのことはしていない。この計画は結局のところ父頼みだ。しかしこれが9歳の僕の限界である。
「これで本当に母ちゃんのことがなんとかなるなら坊主はそろそろ家に帰るか?」
本来人質の僕を目的が達成してもいないのに帰してしまおうとするとはなんて甘ちゃんなんだろう。それとも僕の計画への全幅の信頼の現れだろうか。
だけど。
彼らは罪を犯した。
どうしようもない状況に追い詰められたからかもしれない。
だけど。
だからといって全てを許されるはずもなく。
どんな理由があろうが彼らは断罪されねばならない。
ならばせめて見届けよう。
「僕はあなた方が捕まるところまで見届ける責任があるんだよ。この計画の首謀者として」
「へへ、そうけぇ」
嫌な顔をせず笑う。
驚いたり、怒ったりもせず。
彼等の母が助かるならば瑣末なことなんだろう。
「生きてりゃどうとでもなるさ。それこそ母ちゃんに怒られるのさえ楽しみでぇ」
例えば僕の愛すべき妹が同じ状況になったとき。
父や母がなんとかするだろう。
彼らにはそんな存在が居なかった。だから自分で何とかしようとして何とかできなくてこうなった。
僕に父や母がなくいまの家柄もなかったら同じことをしないとも限らない。
いや、きっと同じことをするだろう。
あのときの質問の答え。
そう、もう半分は同情である。
僕は彼らに同情したのだ。