26. あ、言うの忘れてました!!
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「薬持ってきたよ」
「貸せ」
兄貴と呼ばれる人物が僕の後頭部に薬を塗っている感覚がある。ちょっと痛いが寝ている予定なので声を出すわけにはいかない。
「母ちゃん今日は静かに寝てたよ」
「そうか。早く何とかしてやんねぇとな。こいつらには悪いことしちまったけど手っ取り早く稼ぐにはもう犯罪しかねぇよ」
くぅ。泣ける。僕転生してから家族の絆とかに弱いんだよな。
だけど。世の中はそんなに甘くない。
彼らの誘拐はすぐに露顕するだろう。
僕の頭の後ろにいる2人に話かける。
「ねぇ、オジさんたちこんなこともうやめなよ。すぐにバレて捕まっちゃうよ。今ならまだ罪も軽いだろうし僕らを帰してくれないかな」
「なんだ、坊主起きてたのか」
「ううん、傷が痛くていま起きたの」
さらっと嘘をつく。
「そうか。すまねぇな。そのお願いは聞けねぇんだ。おっちゃんたちはな金がほしいのさ」
「どうして?」
「母ちゃんの治療費がねかかるんだよ。おっちゃんたちには到底用意できる額じゃないんだ」
「こら、ガラン。勝手に言うんじゃねぇ」
兄貴がガランを怒鳴りつける。
「坊主。これはあくまでここにいるおっちゃん2人だけの犯罪だからな」
もー。何この完璧さ。もうほんと泣きそうだよ。
「でもどうせすぐに捕まっちゃうよ」
「いいんだよ。別に。母ちゃんが治療受けれた後に捕まるのは」
溢れそうになる涙を止める術がない。両手両足縛られているからだ。ふんっと力を込めてまるで某漫画のように縄を引きちぎる。当然これは演出で実際はサイコキネシスで切ったわけですけど。人前で泣いちゃだめだよね。僕は我慢する。
オジさんたち2人は何が起きたのかわからないという感じで目を丸くしている。
「ねぇ、これは提案なんだけど僕以外の3人を返してあげてほしいんだ」
彼らを巻き込むわけには行かないからね。
「いや、そういうわけにはいかねぇぜ」
「あのね、僕はお願いしてるわけじゃないんだ。見てわかる通りいつでも抜け出せる状況にあったのに甘んじて拘束されていたんだよ。そしていまなぜその状況から脱出したと思う?それも誘拐犯の前で」
「もうオレらが怖くねぇってことか?」
そう、彼らがもう脅威ではなくなった。目的もわかり他に共犯者もいないなら僕はもう拘束されている理由はない。半分正解。
「正解」
「だがその提案は呑めねぇな。返したら金が手に入らねぇ」
「これでも?」
僕はサイコキネシスで2人を荷台に叩きつける。
「ああ、呑めねぇ」
荷台に叩きつけ圧力をかけられた状態でう、ぎぎと呻きながらも拒否された。
あ、言うの忘れてた。
「当然、彼らを返してくれるなら僕から代替案があるよ」