幕間
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「ぐりむ、あっちに新しいお花が咲いたの」
舌っ足らずに僕を呼ぶ声。小さな手に引っ張られる僕の小さな手。
「あのね、いっぱい咲いてて綺麗なんだよ」
走ることにより赤いリボンをつけたふわふわの光り輝く金髪が揺らめいていた。これよりも綺麗な花なんてあるのだろうか。
「ほら、はやくはやく」
後ろを振り向いた小さな彼女は白い肌にほんのり色づく頬、通る鼻筋に細められた目には長い睫毛で影ができていて作りもののように美しいのに動くことにより愛らしさを醸し出している。
あちこちにレースが散りばめられているひらひらのワンピースがよく似合う。
「ぐりむ来るの遅かったから急がないと枯れちゃう」
彼女とは半年に1回ほどしか会わないので遅いと言われてもどうしようもない。いまさら走ったところで影響はない気もするが彼女の気が済むなら付き合おう。
「ほら、あっち」
指を指し着いた場所には生垣に咲いた白い花が見えた。
「ほんとだ。綺麗だね」
「違うの。昨日はもっといっぱい咲いてたの。もっともっと綺麗だったもん」
「そうなの?でもいまも綺麗だよ。見せてくれてありがとね」
彼女は少し不満そうな顔を浮かべる。
「ぐりむがもっといっぱい会えたら見せれたのに」
庭に転がる小石をつんと蹴ってわかりやすくいじけてくれた。
そこにびゅっと突風が襲う。堪らず目を瞑り去るのを待つ。
ほんの数秒で収まったが彼女のリボンが風で飛ばされてしまっていた。
「あー、私のリボン。気に入ってるやつなのに。もうやだぁ」
何かが振り切れたのか彼女の目にはみるみる涙が溜まりいまにも決壊しそうだった。長い睫毛に縁取られた橙色の瞳。零れ落ちそうな雫をもったいなく感じ僕は彼女の涙を指で掬う。
「泣かないで。いま誰かを呼んで来るから」
小さな僕らでは手が届かない生垣の上の方にリボンはひっかかっていた。
「やだぁ。また風が来たらなくなっちゃう」
僕は彼女を泣かせたくなくて手を翳しサイコキネシスでリボンを取る。
ふわっとリボンを浮かせ自分の前まで持ってきて手に取る。
「泣かないで。僕のお姫様」
片膝をつき彼女に差し出す。
きょとんとした顔で目をぱちぱちした後リボンを受け取る。零れることのなかった涙は瞳を縁どった睫毛に留まり反射して笑顔と相まって眩しいほどに美しかった。
「ありがとう、ぐりむ。ぐりむ魔法使えたのね」
「うん。僕と君との秘密だよ」




