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5-41. 譲位!!

 

 □□□□□□□□


「アーデおじさま。いいえアーデベルト国王。あなたにお願いがあります。王の座を譲位する気はありませんか?」


 現在47歳のおじさまが王の座を譲位する理由は表向きない。だけど僕は知っている。彼がその位置に望まず座していることを。出来ればさっさと明け渡したいとまで思っていることを。


「グリーム、いきなり何を言っているんだい?」


 おじさまは困惑した声を出す。


 ¨出来るならば私だって譲位をしたい。だがしたいからといって出来るものではない。わかっている。私が守り続けた王家の誇りをこんな所で失うつもりはない¨


 おじさまだって本当は譲位したいことはわかっている。だけどそれは世間一般的に許されない。何の非もなく病に冒されたわけでもなく次代に交代するわけにもいかないのだろう。そんなにもその椅子は軽くないのだから。


「僕とランの婚約は成立したんですよね?五大家筆頭のアズニエル家長男である僕と次席のハーミンク家長女であるランとの婚約が。ならば王の座もアズニエル家に返還して頂きたい」


 何がならばなのか喋っている自分でもわからない。理路整然と話しているようでまるで理にかなっていない。ランの方を見ることが出来ない。事前に一言かけてはあったものの僕の独断専行にランがどう思うのだろうか。


「そういうわけにもいかないよ。クラウスに王の座を明け渡したいという気持ちがないとはいえないが今交代する理由がない」


「アーデベルト国王。僕は父に譲れとは申しておりません。今交代する理由がないと仰いましたがそうでもありません。僕らの婚約が今成ったのだから今譲位してもおかしくはないのでは。それに僕はドラゴンスレイヤーになりました。僕以上に玉座が相応しい人物はいないんじゃありませんか?」


 いくら譲位してほしいからといって不遜な態度を取るのはしんどいな。


「君の言い分はわかるが私の一存では決めかねるな」


「おじさま、私たちに玉座を婚約祝いにくださいませ」


 それは意外にもランからの援護射撃であった。ランが自己責任のもと発した言葉である。五大家筆頭、次席の僕らのお願いはそれだけでも力を持つ。ゆくゆくは当主の座を約束されている長子の僕らの言葉には。


「そう、強権をもって退かせる。実に王家らしいやり方だね。君らの願いは恐らく叶うだろう」


 おじさまは席を立ち窓の外を眺めている。一見不機嫌そうに見えるこの行動だが彼は内心喜んでいた。18歳で即位して自由に王都からさえ出れない生活をしていたのだ。当然である。

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