5-28. 賢明な判断!!
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乾いた服を投げてもらって空中で着替える。乾燥機とは比べ物にならないくらいの高速乾燥である。この世界には乾燥機なんて物は存在しないけど。
「なんだか下に降りない方がいい気がするしぼくはこのまま消えることにするよ」
僕が着替え終わるタイミングでハーティットがそう言った。確かに今皆が居る所に戻ったらティアナさんから質問攻めにあいそうだ。読心能力なんて使わなくてもあの人が考えていることがわかる。ハーティットが能力を使ったかどうかはわからないが賢明な判断だと思う。彼が伝説の魔人と呼ばれる存在だとバレたら実験動物扱いになるだろう。例えバレなくても魔力値が高いことは先程のやり取りでバレてしまっているので皆の所に降りたらどちらにしても面倒なことにはなるだろう。ティアナさんがハーティットを放っておいてくれるとは思えない。
「今回もありがとう。いつもハーティットには助けられてばっかりだね。いつか僕が君に手を貸す番になるからね」
「気にしなくていいよ。グリムを助けるのは何ていうか言い方悪いけど興味本位だから。この世界に今のところ君とぼくしか転生者が居ないからね。発覚してないだけだろうけどこんな特異な共通点の持ち主のこと気にならないわけがないよね。それに同じ転生者としてたまに会いたくなるんだよね。こんな話誰かにしたら頭おかしいやつ扱いされちゃうからさ。だからグリムと共有したいんだ」
その気持ちはわかる。僕は魔力値0のことや魔法無効化は皆に話せても読心能力や転生の話は出来ない。人に話したら避けられたりすると判断したからだ。気兼ねなくこういう話が出来るのは僕にとってもハーティットだけである。
「うん、それでもありがとう。またね」
「また困ってる時は呼んで。近くに居たら来るから。じゃあね」
そう言ってワイバーンと共に去っていった。いつも通り短い滞在時間だったな。困っている時に呼ぶなんてまるでヒーローだ。彼を空中で見送ってから地上へと降りる。ハーティットの代わりに僕が質問攻めにあうかと思うと憂鬱だがそれくらいは受け入れよう。彼のおかげで実験は終わったのだから。