5-27. パンイチ!!
□□□□□□□□
「どうして力を使わないの?」
それは上空で2人きりになってからハーティットにかけられた言葉だった。水に濡れた服が肌に張りついてとても脱ぎにくい。服を手渡しすると無効化が発動してしまうので投げて渡す。
「忘れてたんだよ。やっぱり溺れてる時に咄嗟には出てこないよ」
何だか自分の無能っぷりを責められているようで居た堪れない。今回は実験だし水魔法だったから無事だがもっと気をつけなければいつか取り返しのならないことになるかもしれない。力があることで慢心してしまっていたのは否めない。
「サイコキネシスもそうだけど読心能力の方だよ。ぼくは君にサイコキネシスを使うように思念を送っていたけど届いてなかったよね?」
あぁ、そっちか。読心能力に関しては条件付けしてあるので普段は発動しないようにしている。勿論使おうと思えば使えるし稀に強い思念は遮断出来ずに届いてしまうこともあるのだが。
「読心能力に関してはあんまり使ってないんだ。大勢と関わる生活をしていると人の心がわかるのはあまりいいことじゃないしね」
「そうなんだ。使うことを覚えた方がいいと思うけどな。特にさっきみたいな緊急時は。いつか後悔することになるかもよ?」
「怖いんだよ。前世でも異端だったのにこの世界でも異端なのが」
「グリムは気にしすぎだよ。この世界の人はサイコキネシスは持ってなくても魔法は持ってるし読心能力や威圧はドラゴンが持ってる。あとはギフト持ちなんかは君が持ってない能力を持ってるよ。君のことを異端だと言う人なんて周りに居ないでしょ?」
「居ないかも。そうだよね。でも読心能力は申し訳ないから普段は発動せずに緊急時だけにしようと思う」
「まぁ人の心なんて知らない方が幸せだしね」
どうやって乾かしているのかよくわからないけど僕の服が喋っている間にもみるみる乾いていく。上空でパンツ一丁という何とも間抜けな格好ではあるもののこれで風邪を引かなくてもよいかもしれない。こういうとき無効化はちょっと不便だなと思う。無効化がなければ服を着たまま乾かせたのに。さすがに上空で一糸纏わぬ姿になるわけにもいかないのでパンツは乾かせないし。
「パンツも乾かそうか?」
「遠慮しとく」
そういえばハーティットも読心能力持ってるんだった。