5-6. お仕事お疲れ様です!!
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嫌なことはさっさと済ませてしまおう。そう思いガストール先生から王城への通行許可証を受け取った週の日曜日の今日、王立研究所へ向かっている。
「やぁ、少年。また王立研究所かい?」
「はい。また呼ばれちゃいまして」
「そうか。通っていいよ。それにしてもここ君専用ってくらい君ばかり通るよ」
初等部1年の頃にしていた強制奉仕活動後もちょくちょく王立研究所に呼ばれる。僕以外の生徒はこの壁の向こう側に行くことが少ないため年に数回しか行かなくても僕ばかりが門を通ることになる。おかげさまで許可を得る短い時間しか喋らないのに気軽に話を出来る程度の仲にはなってしまった。あれか5年経っていると考えると感慨深いものがある。
桟橋を渡り王城側へと着く。立っている衛兵に通行許可証を渡しいつものやりとりをする。
「僕の名前はグリームです。王城にある王立研究所に用があるので通らせてください」
いい加減名乗らなくてもこの衛兵たちも顔ぶれは変わらないので僕のことに見覚えがあると思う。そうは思うものの毎回きっちりと名乗っている。こちら側の衛兵は融通が利かなさそうと勝手に思っているせいでもある。学園側が緩いのだから王城側がしっかりとしているのはよいことだ。
「アズール学園所属グリーム、入ってよし」
一言一句違わずまるで再現でもしているのかと思うほどいつもと同じように通行許可が下りる。
それにしても気が重い。今から自分がモルモットになるのがわかっているんだから。綺麗なお姉さんに会えるのに行きたくない。ティアナさんは観賞用には完璧なのだけど会いに行く用事があるときに鑑賞だけでは済まされない。同級生とは違った大人の魅力があるんだけどな。主に女性らしいフォルムに。なぜかあれだけ研究熱心なのに見た目にも気を使っているんだよなあの人。研究者ってぼさぼさのぼろぼろなイメージがあるけれど髪の毛から爪の先、服装までオシャレなのである。最初だけ少しどきっとしたものの僕を実験体としか見ないので特に何とも思わなくなったけれどあの人の見た目が魅力的なのは変わらない。成長期が来たとはいえまだ同級生女子よりもティアナさんの方が大人の魅力は上なのだ。見た目だけは。中身はランやエレノアの方がしっかりしている。それこそルチカを相手にしている気分になる。しかし研究者とはかくあるべきなのかもしれない。