4-58. 末裔!!
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町長と呼ばれた人物はミカへと近づき手を差し伸べる。
「いつまでもそんなところにへたり込んでないで立ちなさい」
「納得いかん。殺されなきゃあかんかったとしても何でグリムやったんや。うちじゃあかんかったんか?」
町長に差し伸べられた手を取ることなくこちらを睨んでくる。何で自分が選ばれたか知っているけどそれを今口にするのは憚られる。
「それは彼が初代王の末裔だからですよ」
「なんでっ...?」
この町に来てからそんな話はしていないのに。町長はにっこりと笑って答える。
「クラウス様にそっくりですよ。その黒髪といい容姿といい本当に似ておられますな。それに名付けの儀は立ち会いましたから。お会い出来て光栄です、グリーム様」
「なんでや。あんたなんで黙ってたんや。グリムが王族だってわかってたらこんなにも悩むことなかったのに。そらドラゴンもあんたに頼むわ」
何かがミカの中で腑に落ちたのかようやく立ち上がる。僕が身分を明かさないのはいつものことだ。身分を笠に着るのが嫌だから明かさないのだ。今みたいに名乗っただけで許されるなんて僕の方こそ腑に落ちない。
流れてこそいないもののミカの瞳には涙がうっすらと溜まっていた。
「僕がしでかしたことの大きさは理解しています。もし何かこの町に不利益が生じたら父に連絡してください」
結局また父頼みである。成長しないなと思いつつも町に降りかかる不利益を僕個人でどうにか出来るとは思えないのでしょうがない。
「大丈夫です。ドラゴンの遺骸はこの町にも少し頂けるんでしょう?でしたらそれだけで以前と同じモンスターを寄せ付けない効果かあるはずです」
そう言ってまだ若い町長がまた笑う。若いと言っても40代くらいだろうか。この場に居る中ではハドレアドが1番年上に見えるので町長はアラフォーといったところか。
「今度こそじゃあね。また呼んでね」
「うん、また」
問題が解決したと判断したのかハーティットがその場を離れていく。今回は引き止められることもなく薄暗い洞窟内ではすぐにハーティットが見えなくなる。彼にはとても感謝している。落ち込んでいた気持ちが浮上出来たのも1度全てを捨てて逃げられたからだ。