4-57. 証人!!
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僕を否定したスタンツの本心を聞いて瞬きもしていないのに涙が頬を伝っていく。とめどなく溢れる涙を拭いたいのに右手は使用不可である。
「グリム...。君はアズニエルに残ったらいいと思うよ。よく考えたらまだ中等部2年なんだもの。義務教育が終わっていないようなものだよ」
そんな僕を見るに見かねてハーティットがそう言ってくれる。いやもしかしたら本心を見透かされたのかもしれない。僕は前世を含めて初めて出来た友達と関係を修復してやり直したいと思っていた。
「ごめんハーティット。でもいつか一緒に旅したいな」
「いいよ。いつか一緒に行動出来るのを楽しみにしてるね。それじゃあぼくはもう行くね」
「待ちや」
今まで一言も発さなかったミカがハーティットを引き止める。この2人にはエルバドで会ったあのときまで面識はなくどういう理由で引き止めたのかわからない。
「あんたにはここに残ってもらわな困る。ドラゴンを殺したのが誰なのか証言してほしいんや」
そんなの証言なんかなくても僕だ。
「僕が殺したんだよ」
「わかっとるわ。せやけど証人は必要や。あんたが殺したっていう証言をする証人が」
僕が殺したって言っているんだからそれでいいじゃないか。だけどそういうわけにもいかないんだろう。誰かを庇っていたり濡れ衣の可能性もあるから。
今回の件に関しては誰を庇うわけでもなく、紛れもなく僕が犯人なのだけど。
洞窟のひんやりとした床にへたり込みながらも僕への憎悪を胸にミカがこちらを睨んでいる。まぁ彼女からしたら生まれ育った町の守護者を奪われたのだ。当然の反応だろう。
「おやめなさい、ミカ」
声が聞こえた方を見るとカルミンと知らないおじさんが立っていた。
「せやけどこんなん納得いかん。なんでドラゴン殺したん?」
「ドラゴンは死ぬ間際町の者たちにメッセージを遺しました。その少年を責めないこと、またその少年が手を下さなくてももう寿命だったこと。頼み込んで殺してもらうことで町の者たちに形ある者を遺せるのだと。町の者たちはその少年に感謝しています」
「なんでやっ...!!ここに殺した犯人がおるのに感謝とかアホ違うか。町長も皆もおかしなってもうたんや」
「ドラゴンの意思を直接聞いてケツァルコアトルが彼に感謝していたのがわかるのです。だから町の者たちも彼に感謝しようと決めたのです」