4-56. 願望ではないはず!!
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ランの想いを聞いても僕はハーティットと一緒に行くことをもう決めていた。
「ごめんね。僕はもう彼についていくって決めたんだよ」
ふわふわでボリュームのある金髪を左手で撫でながら宥めようと努力する。見た目はふわふわだが撫でてみるとさらさらで触り心地がよかった。さすがお嬢様は髪の1本1本までケアが行き届いているなんて場違いなことを考える。
¨グリムにとって私の存在は瑣末なのですわ。私はこんなにもグリムのことが好きだといいますのに¨
え。ランの考えが聞こえてくる。いや、ランの考えだと思しきものが聞こえてくる。
¨どうしたらグリムはここに留まってくれますかしら。離れたくありませんわ¨
それは僕の願望でないとするならばランの本心。口に出さない言葉をケツァルコアトルから得た読心能力で勝手に読んでしまったのは卑怯かもしれないが何よりも信じられた。
「グリム。オレも行かないでほしい」
まだ何か吹っ切れていないのかあやふやな気持ちがあるのが見て取れる。
「グリムに八つ当たりしちゃったんだ。酷いこと言ってごめん」
これは本心だとわかる。彼の言葉にかなり傷ついた。だけど僕には傷つけられたからといって彼を非難する資格はない。
「勝手に劣等感を抱いて八つ当たりしてごめんなさい」
僕が何も言わないでいるとスタンツが頭を下げた。彼の後頭部を立ったままの状態で見るというのは滅多にない体験だななんて呑気なことを考える。
「頭を上げて」
僕が言わないとずっと頭を下げ続けそうな雰囲気だったので彼の頭に触れ頭を上げるように促す。
¨やっぱりグリムは許してくれないか。オレ酷いこと言っちゃったもんな。出生のことを責めるなんてなんでしちゃったんだろう。グリム自身に嫌な思いをさせられたことなんてないのに。オレだって生まれを責められたらどうにもできないじゃないか¨
それはスタンツの本心だった。ぽろぽろと涙が零れるのを止められない。一度は全てを拒絶する気持ちになったのに彼らの本心を聞かされるととても揺らぐ。口先だけで言っているというわけではないということがわかるから。この能力をくれたケツァルコアトルに感謝しなければいけないな。




