18. まずは1歩、人に感謝しよう!!
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算数の授業が終わりご丁寧にサリがやってくる。
後ろにはエーリケとレミィもついてきた。
講堂で呼び止められたことを聞きに来たときにいた2人である。彼女たちの名前もスタンツは教えてくれていたのだ。メガネをかけているのがエーリケで三つ編みがレミィである。
パーティを組んでパワーアップしている。
彼女1人の口撃力だけでも瀕死なのに。
こちらもスタンツを召喚してパワーアップしてもいいだろうか。
だけど僕は。
さっきの授業中に誰かに助けてもらわないと決めていた。
このままだと僕は将来ただの傀儡に成長してしまう。少なくとも2年後に何にもできない兄の姿を可愛い妹に見せるわけにはいかない。
彼女が言葉を発する前に僕は席を立つ。
ガタンッ。
そしてサリに近づく。触れる距離まで。
彼女の両手を握る。
文字通り誰も僕と彼女の間に入れない。
「ごめんね、サリ。君は優しいからヒューイットのことが心配だったんだよね。ヒューイットはね、大丈夫だよ。昨日彼の部屋を訪ねて謝りに行ったんだ。僕たち仲良くなれたんだ。ヒューイットは心が広いよね」
笑顔で捲したてる。まずはサリを持ち上げてその後ヒューイットの無事をアピール。そして彼と仲良くなったことを報告して口撃する必要はないこともアピール。そして最後にヒューイットも持ち上げる。我ながら完璧。
「もういいわ。私もちょっとしつこかったと思うし」
サリが撤退していった。
少し顔が赤くなっていたので怒っていただろうけれど引いてくれた。やっぱり相手の気持ちになって考えなきゃね。
よかった口撃されなくて。
この対応で無理なら僕にはお手上げだった。
それこそ・なかまで誰かを召喚しない限り解決しなかっただろう。
一安心して席に戻る。
「よかったね、何とかなって」
小さい声でそれでも彼女なりに精一杯振り絞ったとわかる声で話しかけられた。僕の前の席からである。
椅子に対し横に座り体は隣の席のファナを向いて少し俯きながらもその声は僕にかけてくれたんだとわかる。
ぽんぽんと彼女の頭を撫でながら笑う。
「心配してくれてたんだ。ありがとう」
メアリはなんだか妹みたい。ついいつも妹にやってる仕草が出る。
ほぇっ?と言って彼女が頭に手をやったとき距離が近かったことに気づいた。
いま頑張ったばかりで気が抜けている。
「ほんとはね、メアリあの日見てたの」
一生懸命喋っているのが伝わってくる。
「ヒューイット君が魔法使ったのも。グリム君が怒った理由も。なのに何もできなかったの」
ごめんなさいと言いそうだった彼女の頭を撫で制止する。
「君は心配してくれてたんだよね。僕にとってはそれで十分だよ」
「ファナ、君もありがとう」
メアリとファナの仲の良さを考えれば当然彼女は相談を受けただろう。ファナの方を向いてお礼を言う。
「別に、あたしはあんたのためになんにもしてないわよ」
「そうかな?きっとメアリの相談に乗ってくれたでしょう?ふふっ、ありがとう」
全てに感謝しよう。傲慢な人間にならないようにしよう。
毅然とした完璧お嬢様のランのような、或いは人を気遣えるスタンツのような優しい人間的魅力ある人物になろう。