4-51. 大役!!
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¨思ったよりも早く決心がついて嬉しく思うぞ¨
そう言われるのも当然だ。頼まれてから2日しか経っていない。決心がついたのは外的要因が大きい。もうどうとでもなれという気分なのだ。
「本当に弑しちゃってもいいんですか?」
¨よいのだ。それにより我はこの世界に生きた証を残せる。我の死骸はアズニエル家で利用しておくれ。そしてこの町にも少しだけ分けてあげておくれ。我にはこの森がある町もまた大事な場所だった。我が平穏な生活を送るために努力をしてくれた住人たちにも感謝しているのだ¨
ドラゴンの死骸。それは鱗1枚、毛1本ですら貴重で高級品だ。この世界で10体程しか存在してない上に超長寿な最強生物なのだ。手に入れるのも苦労する品だろう。
¨肉は食べても不老不死にはならないが栄養素は高いだろう。骨は加工すれば武器になるぞ¨
思考を読まれている状態でいくら鱗や毛とはいえ物扱いしたのは不謹慎だった。すみません。
¨よい。我はこの時を待っていた。そのようなこと瑣末だ¨
「他に何か伝言とかはないですか?」
¨特にないな。覚悟は出来ている¨
覚悟が出来ていないのは僕の方だ。だけど今この気持ちのままでやらなければ決心が鈍るだけだ。後悔するかもしれないが勢いがなければこんなこと出来ない。
¨後悔などしなくてもよい。これは我の希望なのだ¨
「いきます」
ケツァルコアトルの気だるげに垂れた頭が上がることはなく僕はそのままぐるりと頭部にサイコキネシスを使って首を一思いに捻る。恐らくそれだけでも数百kgあるであろう頭部は重くゴキンという音と共に上下逆さまに地面へ着地したとき大地を震わせた。
振動が伝わってきた瞬間後悔する。僕は何てことをしでかしてしまったんだろう。
¨よい、よいのだ。ありがとうグリームよ。これで我はバルドウィンとようやく同じ道を辿れる¨
それはとても奇妙な光景だった。上下逆さまになった頭部以外にどこにも外傷はなく、だけれどそれがあからさまな致命傷だった。まだ生きているがそれは死に至る傷。
ケツァルコアトルの瞳からは徐々に生気がなくなっていき彼がもうかつてドラゴンだったものに変わってしまったことを僕に知らしめる。
打ちひしがれているとパチパチパチとその場に不相応な拍手が鳴り響く。