4-42. 何にも言えない!!
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目の前が真っ暗になって吐き出したい感覚。視界がぐるぐると回るあの感じ。奇しくもあの路地裏で真実を知った日と同じメンバーが揃っている。
ハドレアドと初めて会ったあの日のことを思い出す。確かに彼は全員王都に返すなんて言ってない。
¨今身元確認中でね¨
貴族か平民か確認して平民だったから売ったんだろう。
¨その3人も一緒に王都まで送ろう¨
僕のクラスメイトの女子は全員貴族で誰が誘拐されても消えないように配慮されていた。王都まで送っても貴族なんだから売買に影響はない。あの日の被害者は全員助けられたと思っていた。だけど目の前にはあの日のお姉さんが売られたからと隣国で生活している。
「グリム、姉さんを知っているのか?」
少し怒気を孕んだ声で質問される。いや怒気を孕んだように感じるのは僕の勘違いだろうか。疚しいことがあるからこそそう思ってしまうのだろうか。祖父が施策して今現在は親戚のおじさんと父が主犯で、僕自身もお姉さんとは4年前のあの日会っていて助けだせたのに助けられていなかったみたい。なんてそんなことは言えなかった。
そこに取引終了したのかカルミンとミカが通りかかる。
「なんやあんたらまだこんなとこで道草食ってるんか。早うご飯食べな間に合わんくなるで」
それは事態を何も把握していないとても間の抜けた言葉だった。だけどそんな言葉に少しだけ救われた気になる。
「ごめんなさい。私ももう仕事に戻らなきゃ」
「待ってください。お姉さんはアズニエルには戻りたいと思わないんですか?」
「私は孤児だから。戻ったところで居場所はないの。ここには旦那と子供がいるし自分を売った国に戻りたいなんて思わないわ」
それじゃと言ってお店の中へと戻っていく。だってスタンツがいるじゃないか。姉弟じゃないのだろうか。孤児だと言うお姉さんを姉と呼ぶスタンツもつまりは孤児なのだろうか。それとも近所のお姉さんという意味なのだろうか。
残された僕たちは何とも言えない雰囲気に包まれていた。