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4-26. 盟約!!

 

 □□□□□□□□


 純粋に、本当に理解出来なかった。言葉は聞こえているのに意味がわからない。単語と単語が繋がらない。言葉だけが上滑りしていくようだ。


「もう1回聞いてもいいですか?」


 ¨よかろう。我の願いはお主に殺されることだ¨


 もう1回聞いても先程と同じ言葉だった。そしてやはり理解が出来なかった。今さっき聡明と褒められたばかりなのに何てまぬけなんだろう。


 ¨何度でも言おう。お主に我を殺してほしい¨


 3回聞いてようやく頭の中に言葉が入ってくる。と同時に斜め後ろに立つハドレアドの方を見る。彼は急に振り向いた僕をぼんやりと見ているだけで別段何も変わらず立っている。


 ¨彼には我の声は聞こえていないぞ¨


 僕の懸念を払拭してくれた。それはまるで初めからこうなることがわかっていたかのように。


 あなたを殺してほしいとはどういう意味ですか?


 口に出すのをやめる。容易に口にしていい内容ではないと判断したからだ。


 ¨実はな、我はもうすぐ寿命なのだ。そしてドラゴンは寿命で死ぬと何も残らぬ。だから我が死ぬ前に殺してほしいのだ。生きた証として我の身体を何かに役立ててほしい。我が寿命で死ぬ前に殺してほしいのだ¨


 そういう理由だったのか。いきなり殺してほしいと言われて面食らったが理解出来なくはない。


 でもなんで僕なんですか?


 ¨それは初代王の血筋だからだ。我はその昔ここに住処を宛てがわれたときにお主の祖先と盟約を交わした。長い歳月をここで安寧(あんねい)に過ごせたら礼に我の亡骸を差し出すと。やがて盟約を忘れてもそれは守られた。今度は我が盟約を守る番なのだ。お主の祖先と約束したからお主なのだ。そしてクラウスよりもお主の能力の方が我を殺すのに向いていると判断した¨


 何もかもお見通しのようだ。僕のギフトを使えということか。確かにどれだけ巨大なドラゴンといえど僕のギフトを使えば可能だろう。でも僕にはそんな覚悟はない。この世界でラビすら殺すことを躊躇しているというのに。


 ¨今すぐにとは言わぬ。だが寿命が来る前に殺してほしい。でなければ我は生きた証が何も残らぬ。他の種族のように子孫を残せるわけでもなくこの方法だけが唯一我の生きた証を残せるのだ¨


 生きた証。ドラゴンでもそんなことを気にするのか。いやドラゴンだからなのか。悠久と言える時を生きたからこそ何も残せないのが嫌なのだろうか。

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