4-17. 待ち合わせ!!
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宗教の存在しないアズニエルで王家が崇拝対象なのはドラゴンと共に在るからという理由もあるんだろう。ケツァルコアトルの住処として提供されたアズニエル領のとある森の中の洞窟。ケツァルコアトルに快適に過ごして貰うために世話役が集まって結果的に森の近くに出来た町が待ち合わせ場所だった。
「遅いやんか。待ちくたびれたで」
馬車が到着し僕らの身元など一切確認せずにかけられた言葉だった。観光地になっているとはいえ小さな町には塀は無く1m程の高さの柵があるのみだった。その柵の上に乗って待ちかまえていた2人組。1人は柵に座りもう1人は両足柵の上に乗って屈伸の体勢だった。屈伸というよりもヤンキー座りとでもいうのだろうか。そのヤンキー座りをしていた方に話しかけられた。
「時間より早いんだから責めたりしたらダメですよ」
「せやかて教えを乞うなら早う来るのが常識やんか」
「お待たせ致しまして申し訳ありません」
少しキャラの濃いお姉さんを呆然と眺めていることしか出来なかった間にランが謝罪した。
「「ごめんなさい」」
それに便乗して僕らも謝る。
「いいんですよ。まだ待ち合わせ時間にはなってませんし気にしないでください」
そう言って優しそうなお兄さんがフォローしてくれる。
「冒険者チーム、リントヴルムで間違いないかね?」
ハドレアドが2人に確認する。
「そうです。自分がリーダーのカルミンでこの子がミカです。せっかちなだけで悪い子じゃないんで仲良くしてくださいね」
リーダーを名乗ったカルミンはにっこりと笑う。スラリと伸びた手足に細身の身体。色素の薄い髪と瞳。優男という言葉がぴったりの風貌だった。ミカは反対にとても野性味溢れる容貌だ。日に焼けた褐色の肌にチューブトップに短パンで上着を着ているとはいえ露出度が高かった。僕と同じ黒髪で少し親近感が湧いた。黒髪って物凄く珍しいわけじゃないけど人数少ないんだよね。
「うちは別にあんたらと仲良うするつもりはあらへんで。国から頼まれたら断れんからしゃーなしや。足だけは引っ張らんといてな」
「これ本心じゃないから大丈夫ですよ。皆さん短い間ですがよろしくお願いしますね」
ミカが喋ってはカルミンがフォローする。翻訳機か何かかな。尤も翻訳前の言葉も意味は伝わってるんだけどね。