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13. パンがないならケーキを食べればいいじゃない!!

 

 □□□□□□□□


 僕は魔力値0で魔法が使えない。


 けれど超能力が使える。


 僕は能力はもう要らないと言った。


 けれど元々持っていた。


 僕はテレパシーが使えない。


 けれどサイコキネシスが使える。


 僕がヒューイットを空中に浮かせられたのはただそれだけのことである。


 □□□□□□□□


 あのあとヒューイットは気絶していたので養護室へ運ばれ先生方にはよくわからない事態だったので安全の為医者にかかった。結論を言えば気絶をしただけで特に何の問題もないらしい。

 久しぶりに能力を使ったので加減を間違えて脳震盪を起こさせてしまったのだろうと僕にはわかるけどそんなことは先生方にはわからないので当然の処置である。


 そしてランから何をしていますのと軽い小言とクラスメイトからの冷ややかな目線とひそひそ声を乗り切って終業後に呼び出された。

 スタンツと何故かポルトまで味方だったので何とか乗り切れたのだ。ランも口には出さないが少なくとも敵ではなかっただろうと信じたい。


 呼び出された学園長室には学園長先生とガストール先生、リッツ先生とあと一人知らない人が居た。


 学園長先生は自分の机にある椅子に。

 ガストール先生とリッツ先生は応接用にあるソファに。本来2人で座れそうなソファには知らない男が座っていた。

 子供の僕なら座れそうなスペースが空いていたが知らない男の足にピッタリくっつくのもなんなので先生方を挟んで学園長先生の正面に立つことにした。


「初めまして、グリーム君。自分はノッカーだ。君の話を聞いて駆けつけたんだ」


 ノッカーと名乗った彼はご丁寧にも立ち上がって手を差しのべてくれたので握手した。


「うん、彼はギフテッドですね」


 瞬間ノッカーは学園長先生に顔を向けそう言った。


「君、自覚あるでしょ」


「はい」


 なぜか彼の言葉に素直に答えてしまった。ギフテッドという言葉の意味はわからなかったが僕はあの事態への自覚ははっきりとある。


「自分は王立研究所のギフト研究員で、ギフトがあるかどうかわかるギフトを持っているんた。ギフトっていうのはね、神様からの贈り物なんだよ。神様から特別愛されている者に与えられる贈り物だと考えられている。稀に現れる魔法とは違う能力のことをギフトと言い、能力持ちのことをギフテッドと呼ぶんだ」


 神様から愛されているかはどうか知らないが烏滸(おこ)がましくも気に入られたんじゃないかと思ったことはある。


「ふぅむ。魔力値0だと思っていたがギフト持ちなのか。いや、魔力値0だからギフトが与えられたのかの?」


「自分はギフテッドだけど、魔力もありますよ。いや、むしろ周りのギフテッドで魔力値0のやつを知らないです」


 大柄な男ノッカーは大柄な見た目に反してゆっくりと喋る。大柄だからこその心の余裕なのだかろうか。


「でも、彼のギフトは魔力の代わりにたくさん与えられているのかもしれないです。よくわからないけど、魔力がないならギフトを代わりに使えばいいんじゃないですか」


 パンがないならケーキを食べればいいじゃない。

 魔力がないならギフトを使えばいいじゃない。

 魔力値を測定される前までは僕もそう考えていた。風属性魔法ならサイコキネシスでも再現が可能だと。あの魔力値測定器さえなければ僕は魔力0なのを誤魔化せたのである。


「ふぉふぉふぉ。その提案採用じゃ」


 長い白髭を触りながら躊躇なく決定された。


「ふむ、そうじゃな。彼の魔力値0は測定ミスということでどうじゃろうの?イタズラに子供たちを混乱させるのはよくないしギフテッドの存在は一般に広く知られているわけでもないしの」


「はぁ、ですが今日のことは子供たちにはなんと説明すれば?」


「風属性魔法の暴走じゃの。魔力値測定をしたときに何らかのアクシデントで抑え込まれていた魔力が今日解放されたのじゃ。正しい処置をしたのでもう暴走することはない。魔力を抑える薬は販売されておるしの。そういうことでいいかの?グリームや」


 学園長先生はあからさまに僕の味方らしい。これはとてもありがたいことなのだから甘受しよう。


「はい。大丈夫です。お気遣い頂きありがとうございます」


「では解散じゃ」


 地獄の5者面談かと思いきやあっさり解放してもらえた。


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