3-30. 帰りの馬車の中!!
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帰りの馬車の中、僕はいつグリームと名前を呼ばれるのかヒヤヒヤしながら過ごした。というのも馬車の中には僕、ラン、メアリ、サリ、ルチカ、見つかったファナと何故だかあのなんの特徴もない普通のおじさんぽい憲兵隊員が一緒だったからだ。
きっと彼は憲兵隊の中でも少しは偉い人に違いない。彼にはグリームだと名乗ってしまっているがサリとルチカは僕のことミリムだと思っている。ファナにはあえて何も言っていない。ランとメアリは僕のことを知っているがグリームであることを隠したがっていることも知っている。だからおじさんが空気を読んでくれるならばこのままバレることなく帰れるだろう。そんな状況で6人乗りの馬車に子供6人と大人1人が同乗し長く狭い馬車旅の中何も喋らないわけがない。しかも5人はクラスメイトという共通認識があってルチカまでいるのだから。
「ランちゃんあのときはありがとにゃ」
「いえ、ルチカさんが無事でよかったですわ」
「あのときランちゃんはどうして魔法が使えたにゃ?」
「水を飲まなかっただけですわ」
「喉が渇いてて飲んじゃったにゃ」
少しシュンとしてルチカがそう言う。
「仕方ありませんわ。でもこういうとき相手から差し出された物は疑った方がよいですわよ」
とても耳が痛いお言葉だ。ランはルチカに言っているのに僕にまで刺さる。
「ミリムもありがとにゃ。ボクが無事で帰れるのはランちゃんとミリムのおかげだにゃ」
「ルチカが無事ならそれでいいよ」
そう。こうして皆で馬車で帰れているんだからそれでいいんだ。僕の左側にはランが右側にはサリが居てランの正面にルチカがその隣にはファナとメアリが居て更に隣にはおじさんが座っていた。
ちらっとおじさんの顔色を窺うが僕がミリムと呼ばれていることに何も言わないでくれている。気づいていないのか気にしないのか黙ってくれているのかまではわからないがとりあえず大丈夫そうだ。
メアリはファナが無事で安堵したのかずっと抱きついている。引っ込み思案の彼女が髪を切ってまで潜入して頑張ったのだ。緊張の糸が切れて甘えてしまうのもしょうがない。僕も今スタンツが居たら抱きついていたかもしれない。昨日からちょっとの時間しか経っていないのに色々なことがあり過ぎた。




