3-29. 移動移動また移動!!
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隣国エルバド。工業国であり興行国でもある。木製のテーブルや本棚、木で出来るありとあらゆる物を作るのを生業とした国である。またその性質から男性が集まりやすく拳闘などの興行も盛んになった国でもある。
アズニエルはエルバドに面している唯一の国なため貿易を生業にし輸出入で黒字を出している。アズニエル王国と工業国エルバドは相互扶助の関係にある。
エルバドにはシャルノット領とハーミンク領が面していて、ルノホルル領はシャルノット領とカザハイン領に挟まれ隣国はなくカザハイン領とアズニエル領は逆隣サシュハに面している。サシュハは繊維工業が盛んで服は勿論、カーテンや絨毯など布で出来るありとあらゆる物を作っている。
昨日はアズニエル領に居たのに1日で随分移動したものだ。屋敷からアーノルンに移動したのとアーノルンからここまで移動したのとを合わせるとほぼ丸一日移動してたんじゃないだろうか。
そして今からまたここからアーノルンまで移動するのか。気が重いが帰らなければ新学期に間に合わないし父やアーデおじさまにも直接連絡しなければならないしやることはいっぱいだ。勿論今回の件でお世話になったので兄貴とガランにも報告をしなきゃいけない。前回とは違いこちらから頼ったのだからどうなったのか報告する義務がある。
「そういえばここに居た少女たちはどうなるんですか?」
「ああ、彼女たちは今身元確認中でね」
「そうですか。僕らより少しだけ早く攫われたファナっていう少女はここに居ますか?」
「ん?中にはまだ怖くて喋れない子も居て全員は把握出来てないんだよ」
「肩くらいの長さのウェーブがかった紫っぽい髪の色の子です。あと食堂に居た前髪をアップにしているストレートロングの女の子はサリでショートカットで一人称がボクでちょっとうるさいのはルチカって言います。3人とも王都にあるアズール学園のクラスメイトなんです」
「あぁ、ありがとう。じゃあその3人も一緒に王都まで送ろう。馬車まで案内するけど歩けるかね?」
「行けます」
こうして二度目の誘拐も呆気なく幕を閉じた。学園に通うため屋敷を出ることになってから半年も経たず2回も誘拐されるとは父が言う通り外はなんて危険な所なんだ。