3-28. 無事でよかった!!
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コンコンッと申し訳程度にノックをする音がして僕らの返事を待つ前にドアが開く。
「やぁ君たち。寝ていた子は目覚めたかね?」
そこに居たのは知らないおじさんだった。憲兵隊の黒い制服を着ているのでこの人も憲兵隊員なのだろう。どちらかと言うと戦闘には向いていなさそうな中肉中背のどこにでも居そうなおじさんだった。威圧感のある憲兵隊の制服を着てても醸し出される雰囲気は普通のどこにでも居るおじさんだ。
「はい、もう大丈夫です。元気になりました」
「そうか、それはよかった。ところで君たちの名前を聞いてもいいかね?」
「ランと申します」
「メアリです」
「グリームです」
ミリムと名乗るか悩んだがここには嘘をつかなければいけない相手はもういなかった。事件は解決したのだ。本名を名乗ってもいいだろう。
「そうか、やっぱり君たちがそうだったのか」
「何がですか?」
「いやね、君たちの親御さんそれぞれから連絡を頂いていてね。無事を知らせねばならんので安否確認がしたかったんだ。全員無事で何よりだ」
僕は父とアーデおじさまに連絡をしているしランもアーデおじさまに連名で手紙を送っているので親は知っている。僕が離れている間にもしかしたら自分の親にも手紙を書いているかもしれない。メアリもいつの間にか親に連絡をしていたんだな。僕らが合流する前だろうか。国境付近に住んでいるらしいので手紙が届くだけでも相当時間がかかったことだろう。馬車ではなく騎乗による速達だろうか。
「いや、本当に無事でよかった」
とても安堵した表情で同じことをおじさんは言う。40代くらいの僕らの父よりも年上のおじさんが。とはいえ当然だろう。五大家2人に上流貴族1人の安否がわからないとなると気が気じゃなかったことだろう。
「ご心配おかけしましたが僕は元気です」
「あぁ、君たちの親御さんにもそう連絡しとくよ。ところでもう動けるかね?」
「はい、大丈夫です」
「そうか、じゃあ王都アーノルンまで送ろう」
「ありがとうございます。ところでここはどこなんですか?」
「ここはシャルノット領の隣国にほど近い森の中だね。ここから馬車で数時間行けば隣国エルバドとの国境になる」