3-8. 2通の手紙!!
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急いで馬車へと戻る。
「ラン、紙とペンを」
戻って来てからの第一声がこれである。
僕は2通の手紙をさらさらと書き上げる。1通をランにも渡し目を通してもらう。
「この内容で問題なかったら署名して。これはおじさま宛てだから。こっちはお父さま宛ての学園へのアリバイ工作」
「両方見せてくださいませ」
2通目もランに渡す。父への手紙を読まれるとは恥ずかしいものである。
1通目を読んだときランが署名をしたのを確認して手紙を受け取る。2通目も受け取って封をした後にガランに渡す。
「これを前回と同じところに届けてほしい」
「わかったよ、坊主」
前回と同じく宛先はジークである。今回の手紙自体はそんなに急ぎの内容でもないが父宛てにするよりも確実に父の所へと届く。
「メアリも呼んでくるから3人はもう学園に帰るんだ。あそこなら安全だし攫われる心配もないだろうし。馬車で行くなら途中で攫われることもないしね」
「グリムはどうしますの?」
「僕はこのまま攫われて売られることにする。話を聞いてみるとどうやら同じ所に売られるみたいだからファナが売られた所にも辿り着けるだろう」
「何言ってるんだ。危ないんじゃないのか?」
反対をしたのはスタンツだった。誰よりも先にランに反対されると思っていたので意外だった。
「売られるまでは大丈夫だと思う。だからこそ一刻も早くファナを助けてあげなきゃいけないんだ」
「そうですわね。憲兵隊に話してもどこに売られたのかわからないのではお話になりませんものね。わかりましたわ。私はグリムの考えに賛同しますわ」
「ありがとう、ラン。無事に帰ってくるからね」
「ええ、気をつけて」
「気をつけろよ、グリム。本当はオレも一緒に行きたいけどオレに女装は無理だからな」
「気持ちだけでも嬉しいよ。また帰ってきたら話聞いてね。じゃあね」
時刻はもうすぐ21時を回る。子供が1人で外を歩いていても怪しまれない時間の限界である。兄貴と一緒に街を歩いてはぐれたフリでもして攫ってもらおうか。普段は誘拐されないように気をつけているのに今は誘拐してもらうために努力をするとは何とも皮肉なことである。1人で出歩かない、できるだけ明るくて人通りの多い所を歩くなど気をつけていることの逆の行動を取ればいいのだから簡単といえば簡単だ。