3-7. 常識!!
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わざとらしくない程度に宿屋の通りをうろちょろする。薬屋で痛み止めを買ってみたりしてあたかもおつかいに来たかのように行動してみる。誘拐犯たちに目をつけてほしいのでこの辺りの子供ではないことをアピールする為にもきょろきょろしてみたり迷ったふりをして立ち止まったりする。
それらの行動が功を奏してか無事に攫われる。腕を
引っ張られ路地へと引き込まれる。2人組で手を抑える係と縄で縛る係がいたが、縛られる前にサクッとサイコキネシスを使用して逆に彼等を縄で縛る。この世界では縄で縛る時掌を合わせるのが常識らしい。掌から魔法が出るのでそれを防ぐためである。
こんな常識知らずに過ごしたかった。
メアリと面通しするためにも彼等を目隠しする。
「君が攫われそうになったのってこの人たち?」
ジークに倣って僕もメアリの名前を呼ばない。
「はっきりとはわからないけど違うと思う。もっと背が高くて細い人が居たし3人居たから」
こんなにも世の中には危険が溢れているのか。誘拐犯が何組も居るとか勘弁してほしい。
「オジサンたちどうして攫おうとしたの?」
「金だよ金。金が欲しかったんだよ。病気の妹に治療を受けさせたかったんだ」
こんなに口の軽い彼等を僕は信用しない。兄貴とガランはサイコキネシスにも耐え母を共犯ではないと断言していた。
「まぁ何のためにお金が必要なんだとかどうでもいいんだけど誘拐したところでどうやってお金になるの?身代金を要求するにもどこの家の子かもわからないのに」
彼らが本当のことを言うのかを見極める。攫った子供は売られているということを知っているが知らないフリをする。
「売れるんだよ。とある人たちが買い取ってくれるんだ」
そこまで嘘つきじゃないんだろうか。とても浅慮な気もするが。
「買い取ってくれるのは誰?」
「オレたちもあの人たちの素性は知らねーよ。でもそこに連れてけば1人50万エクウスで買い取ってくれるんだ。上手くいけばボーナスだってつけてくれる」
50万エクウス。人1人の値段としては安いが2ヶ月分くらいの月給だろう。彼らにとっては楽をして稼ぐには犯罪を犯してでも十分な額なのだろうか。
「どこに行けば売れるの?」
「それはな────」
耳を疑うような言葉を聞く。