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平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第2章【ノイ編】
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020【271~273日目】武器

 

 料理とリバーシが受け入れられ、俺の懐は大分潤った。日本にいた頃では考えられほどの貯蓄額になり、そろそろ次の計画……協力者集めと自身の強化に力を入れる頃だと判断する。


「スティードも戻ってくるしな!」


「きゅ?」


「スティードに会うの久々だな、もち」


「きゅー!」


 スティードは護衛任務で最近ずっとノイを離れていたのだが、そろそろ戻るとペール達に連絡があったのだ。


 もちもスティードという名前に反応しているのか、嬉しそうに飛び回る。


 スティードは強い上に優しくて頼りになるので、是非とも戦士として旅の仲間になって欲しいと思っている。



「結構筋肉もついたし、スティードに稽古つけて貰えるかな!」



 ノイの街についてすぐの頃、スティードに剣術や体術の稽古をつけてもらおうと頼みに行ったのだが、まずは筋肉をつけろ的なことを言われ断られてしまったのだ。


 言葉が分かるようになってから録音を確認したところ『そんなヒョロヒョロの身体で何を言ってるんだ?』と割と辛辣なことを言われていた。



「もうヒョロヒョロとは言わせねぇ!」


「きゅっ!」

 


 もちも何故か力強く鳴いてくれるが、もちはずっともちもちのマシュマロボディのままだ。



「……もちはもちもちのままでいいからな?」


「きゅ?」



 ―― 筋肉ムキムキでずっしりと重いもちは……ちょっと……。



 ……



『ただいまー』


 スティードからの連絡があった数日後、帰宅するとペールとメールがスティードを持て成しているところだった。



『スティード!?』


『トワか!? すっかり見違えたじゃないか!』



 こちらに気付いたスティードが立ち上がり、久しぶりだなと言いながら痛いくらいの勢いで背中を叩いてくる。



『いたっ、痛いって、スティード!』


『何だ! 言葉もかなり話せるようになってるじゃないか!』



 スティードは驚いたように叩くのをやめ、まじまじと俺の顔を覗き込む。


 まぁ、毎日毎日嫌になるほど言葉の勉強していたので当然だ。

 あんなに勉強したのは受験の時以来だ。むしろリアルに生活がかかっているので、受験の時以上に真剣に勉強したかもしれない。



『ま! 俺も日々成長してるんでね!』


『そうか……よく頑張ったな、トワ』



 わざとらしく胸を張りながら応えると、スティードが予想外に真剣な表情で俺を褒めてくれる。



『い、いや、その……冗談だったんだけど……』


『ん?』


『まだ片言だし……分からない単語も結構あるし……』


『あぁ、こんなに短い期間でこれだけ話せるようになったんだ、すぐに覚えられるさ』


『あ、ありがとう……』



 スティードはどうやら冗談が通じないと言うか……かなり真面目な性格のようだ。真っ直ぐな眼差しで手放しに褒められ、余りの居たたまれなさに息が詰まる。



『そうよ、トワはよく頑張っているわ』


『め、メールまで! 突然なに!?』


『偉いぞ、トワ』


『ペ、ペール!』



 メールやペールまで流れに乗って褒めてくれる。努力が認められた嬉しさよりも妙な気恥ずかしさが先に立つ。


『お、俺が頑張ってるんじゃなくて皆が優しいんだよ! ペールも、メールも、街の皆も……! 色々と声かけてくれて……!』


 俺が分からない言葉があって困った顔をしていれば、皆優しく俺でも分かるように説明してくれる。

 俺が仕事の合間に1人言葉の勉強をしていれば、隣に来て発音の仕方や意味を教えてくれる。


 そんな優しい人達のおかげで俺はここまで話せるようになったのだ。




『トワは皆に愛されているんだな』




 スティードが笑顔で大変気障なセリフを言い放つ。

 しかも格好つけて言っているのではなく、本気で言っている様子だ。



 ―― 誓います。俺、もう、スティードにふざけたことは言いません……。



 俺は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら『いや、あの、その、ありがとう……』とぼそぼそ返した。



 ……




『で、トワ。武器は何を使うんだ?』




 稽古をつけてくれるというスティードと共に家の裏の空き地に回る。


 稽古に入る前、スティードが当然持っているよな?という感じで使用する武器について聞いてくる。そんな風に聞かれても、自分の得物なんて生まれてこの方、持ったことがない。



『えっと……オススメとか……ある……?なんて……』


『…………オススメ?』


『…………ハ、ハイ』


『…………トワは自分の武器を持ってないのか?』



 スティードはまさかな?という表情でこちらを見てくる。




 ―― この反応……武器を持っているのが普通なのか?




『…………も、持ってません』


『嘘だろう!?』



 驚愕するスティードに、こちらが逆に吃驚だ。『初めて会ったときに使っていた短剣はどうした?! 』と矢継ぎ早に聞かれ、短剣とはなんの事だと一瞬考え、カッターのことかと気付く。


 カッターの刃は簡単に折れるよう設計されているし、武器にするには脆すぎる。


 あの時使用していた道具は武器ではないと説明すると、スティードは呆れ果てた顔でこちらを見てくる。


 スティード曰く、ノイやナーエでは子供でも武器を持っているのが当たり前らしい。物騒すぎるだろ……。


『トワの故郷では皆武器を持たないのか……?』


『ま、まぁ……』


『信じられん……』


 スティードは溜息をつきながらも、自分に合うものを選べと代表的な5つの武器について説明してくれる。


 まず1つ目は長剣もどき。

 何故「もどき」かと言えば、こちらの世界の長剣は魔石で作られている物が主流らしい。

 魔法が使える人なら魔法剣のように使用することも出来る様だ。

 つばのない日本刀のような見た目で、剣というより棒に見える。

 切るというよりは突き刺したり、殴ったりして使うらしく、スティードも愛用者だ。


 折れないのかと聞いてみれば、魔石加工を専門にしている職人がいるらしく、魔石を圧縮したりして強度を高めるそうだ。


 2つ目は短剣もどき。

 こちらは長剣を短くし、携帯性と機動性を向上させたものだ。長剣よりかは切れ味がよく、通常のナイフとしても利用可能なようだ。

 護身用の武器として、肌見離さず持ち歩いている人が多いらしい。


 3つ目は棍棒?斧?もどき。

 こちらも魔石製で、重量があり打撃力が高いようだ。使用する魔石の量が多い上に、機動性が低いため、扱いが難しいらしい。筋肉と魔力、両方が求められる武器ということだろう。


 4つ目槍?杖?もどき。

 全て魔石製のものと、先端にだけ魔石が付いているタイプがあるらしい。槍のように使うことも、魔法使いの杖のように使うことも出来るようだ。


 最後5つ目は弓もどき。

 これは俺の知っている弓とほぼ同じ形状で、使われ方も同じだった。弓自体に魔石を取り付ける場合もあれば、弓のやじりに魔石を使用する場合もあるらしい。


 またそれぞれの武器は、魔石製じゃない物や投擲に使用する小さ目の物等、様々な種類が存在するそうだ。




『……まぁ、こんな感じだな。トワは何を使う?』




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