169
日々読んで下さりありがとうございます。
感想やFA、レビューやブクマ、本当に日々励みになっております!
もうちょっと更新頻度上げられるように頑張ります…!
ファーレスが走り続けてどれ程経っただろうか?
竜の姿も完全に見えなくなった。あれだけの巨体が見えなくなったということは、かなり距離が離れたのだろう。
『あ……! レンディスさん達だ!』
道を作り続けていたフィーユが、安堵の声を上げる。
その声を受け俺も前方に目を凝らしてみるが、まだレンディスさん達の姿を捉えることは出来ない。
もしかしたらフィーユの魔力感知内に入ったということあのかもしれない。フィーユの言葉に、俺も安堵の息を吐く。
魔力が届くと言うことは、ほどなくしてソティルさんとレンディスさんに合流出来るだろう。
豊富な知識持つソティルさん、そして膨大な魔力を持つレンディスさんの存在は本当に心強い。
ファーレスに抱えられたまま進んで行くと、『きゅー!』という聞きなれた鳴き声が聞こえてくる。
『もち……!』
俺はバッと顔を上げ、もちの声がした方向に目を向ける。
視線の先に、ソティルさんの足元で嬉しそうに飛び跳ねているもちの姿が見える。
『もち……! もち……! もち……!!!』
もちの元気な姿、そしてソティルさん達の姿を見て全身から力が抜ける。
『トワぁ……! ごめんねぇ……!』
更にセイの声も聞こえてくる。
『セイも……! 無事でよかった……!』
目を凝らせば、もちの口元で精霊石が青く光っている。
セイの本体……精霊石も、もちと共に無事らしい。
ファーレスはソティルさん達の近くに降り立つと、俺とフィーユを荷物のようにどさっと地面に降ろす。
俺はしたたかに腰を打ち付けつつフラフラと立ち上がり、フィーユとファーレスに向き合う。
『改めて……来てくれて、ありがとう。フィーユ、ファーレス…!』
俺が頭を下げると、フィーユが勢いよく俺に飛びつく。
『トワが無事で……! よかった……! 間に合って、本当によかった……!』
フィーユは俺にぎゅっと抱き着いたまま、泣きそうな声を上げる。
『フィーユ……』
俺がフィーユの肩にそっと手を置こうとしたとき、レンディスさんの方から『チッ……!』と大きな舌打ちが聞こえてくる。
『先生、あいつの無事は確認出来ました。もういいですよね?』
苛々とした様子のレンディスさんは俺を一睨みすると『面倒を起こしやがって……』と再び舌打ちをしながら呟く。
俺がその言葉に答えるよりも早く、セイが声を上げる。
『と、トワを責めないでよぉ……! こうするって決めちゃったのはボクだし……! トワは皆に迷惑をかけたくないからって……覚悟を決めてたもん……! 全部、ボクの我儘だよ……!』
『きゅっ! きゅー! きゅきゅー!!』
セイを庇うように、もちも何やら必死に鳴き声を上げている。
『え……っと?』
俺は状況がよく分からず、困惑した表情でレンディスさん達の方を見る。
『……根本原因がコイツなことに変わりはないだろうが。先生まで巻き込みやがって……! とにかく……今はグダグダ言い争っている時間が惜しい。俺は先生を連れてここから離れる。お前たちも精々死なないように足掻くんだな』
レンディスさんが吐き捨てるようにそう言うと、ソティルさんが叱るようにレンディスさんの名を呼ぶ。
『レンディス! トワ達を見捨てるつもりですか!? フィーユもファーレスも魔力が殆ど残っていないですし、魔力回復薬の在庫も少ないです……! ここで貴方が残らなかったら……!』
ソティルさんは最後の言葉を濁していたが、恐らく『全滅』に近い言葉を言おうとしていたのだろう。
俺はその言葉を聞きながら、必死に状況を整理する。
レンディスさん達の言葉を聞く限り、レンディスさんはソティルさんだけを連れてここから離れようとしているようだ。
そしてソティルさんはそんなレンディスさんを止めようとしている。
俺の脳内に、沢山のクエスチョンマークが浮かぶ。
―― なんでだ……?
―― ここは封印の外で、竜は出て来られないはずで、安全な場所なんじゃ、ないのか……?
冷静に考えてみればおかしな話だ。
何故、フィーユとファーレスは俺を助けに来ることが出来たのだろうか?
封印があるせいで、俺のいるところまでは来れないはずなのに。
―― まさか
恐ろしい可能性に気付き、俺はゴクリと唾を飲み込む。
『あの……封、印は……どうなったん……ですか……?』
俺の途切途切れの問いかけに、フィーユとソティルさんが気まずげに目線を逸らす。
レンディスさんは相変わらず憎々し気に俺の方を睨みながら、断罪するように吐き捨てる。
『そこの馬鹿共が封印を壊したんだよ、お前を救うためにな』