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平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第8章【ドラーク編】
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日々読んで下さりありがとうございます。

感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、励みになっております!


 

 俺の叫びが、竜の鳴き声にかき消される。

 これまでの経験上、あの鳴き声を上げたということは魔法を放つ準備が出来たのだろう。


 ―― 届け……! 届いてくれ……!


 俺の声が、想いが、届くことを祈り、必死に声を上げる。

 しかし、竜の口内に白い光がじわじわと溜まっていく。

 俺を守ってくれていたセイはもういない。悔しいが、あの竜の攻撃から自身を守る術はない。


 ―― あれが放たれたら、終わりだ……!


 俺の考えを肯定するかのように、竜の口が一際大きく開き、白い光が辺りを照らす。恐ろしいまでの眩い光が、圧倒的な質量を持って、ゆっくりとこちらに迫ってくる。


 眩しくて、眩しくて、眩しくて。

 視界が、俺の世界が、白く染まっていく。

 熱が、迫ってくる。



 ―― ここで、終わりなのか?

 ―― もう、駄目なのか……?




『トワ――――――――――――――ッッッ!!!!!!』




 諦めかけたその時、 白い世界に、聞き慣れた声が響く。

 ここにいるはずのない、仲間の声が。

 俺の頭をぶん殴るように、物凄い声量で俺の名を呼ぶ。



 ―― あぁ、とうとう幻聴まで聞こえ始めたか……



 幻聴でも、最後に声が聞けて嬉しかった。

 離れて数時間しか経っていないのに、酷く懐かしく感じる。

 現実逃避する自分自身に苦笑しながら、声が聞こえてきた上空に目を向ける。



「……へ!?」



 空を見上げ、視界に飛び込んできた光景に、思わず目を疑う。

 フィーユとファーレスがまるで弾丸のように、物凄い速度で空から落ちて来るのだ。


「なっ……!? は……!?」


 俺は驚愕に目を見開き、言葉にならない声を上げる。

 ふたりの身体が地面まであと数メートルに迫り、「ぶつかる……!」と思った直後、フィーユはバッと両手を前に突き出すと『ていっ!』と可愛らしい掛け声を上げた。

 その掛け声に追随する様に、フィーユとファーレスの落下スピードが減速する。



「――……フィ、フィーユ? …… ファーレス? ほ、本当に……?」



 俺は状況も忘れ、ポカンと口を開けたままフィーユ達を見つめる。


 地面に降り立ったフィーユとファーレスは、迫り来る白い光から俺を守るように立ち塞がると、そのまま竜がいる方向を睨みつける。

 フィーユはもう一度両手を前に突き出し、『えーいっ!』と可愛らしい掛け声を上げる。

 次の瞬間、半透明の障壁が俺達を包み込み、竜から放たれた白い光を受け止める。


『フィーユっ!?』


 無茶だ。

 いくらフィーユが魔力を沢山持っていると言っても、それは人の範囲内のはずだ。精霊であるセイがギリギリ受け止めていたような魔法を、こんな幼い少女が受け止めるなんて、無茶に決まっている。



『ううう〜……!』



 フィーユは持てる全ての魔力を障壁に回しているのか、キツく目を瞑り、苦しそうに唸り声を上げながら障壁を維持し続ける。


『フィーユ……!』


 俺は眩しさに目を細めながらも、必死にフィーユを見つめる。俺に出来ることは……ないのかもしれない。

 けれど、せめて、目を逸らすことだけはしたくなかった。


 フィーユは障壁を1枚だけ張るのではなく、幾重にも重ねて展開することで防御力を上げているようだ。

 眩い光の中、障壁が1枚、また1枚と壊れていくのが見える。


 フィーユも障壁が壊れていくことが感覚的に分かるのか、1枚壊れる毎にビクリと怯えるように震え、自分を奮い立たせるように頭を振り、『うー……!』っと唸り声を上げながら障壁を維持していた。


 普段はぼんやりとした様子のファーレスも、今ばかりは緊張感を漂わせ、厳しい顔で竜のいる方向を睨みつけている。

 俺はといえば、ふたりの背中を見つめながら、言い表せない感情が心の中を渦巻いていた。


 喜び、怒り、悲しみ、悔しさ、後悔。

 けれど、何よりも、俺の中を占めていた感情は……




 ―― パリンッ!




 間近で障壁の割れる音が聞こえる。残りの障壁の枚数はかなり少ないようだ。フィーユの後ろ姿から焦りが感じられる。



『……だめ! 絶対だめ……! まもる……まもるの、私が……! みんなを……!』



 うわ言のように呟きながら、フィーユが祈るように両手を硬く握る。



『おねがいっ……!』



 祈りが届いたのか、数枚の障壁を残したところで竜から放たれた白い光が収束する。フィーユの障壁が、耐えきったのだ。



『よかっ……た……』



 フィーユは竜の攻撃が止んだことを確認すると、身体から力が抜けたのかグラリと態勢を崩す。


『フィーユッ!!!』


 俺とファーレスが慌ててフィーユの背中を支えると、俺達の腕に寄りかかったまま、フィーユがうっすらと笑みを浮かべる。




『えへへ……助けに来ちゃったっ!』




 ブイサインでも浮かべそうなほど明るく、軽やかに、フィーユが宣言する。


『……あぁ』


 フィーユの言葉に同意するように、隣に立つファーレスも静かに頷く。

 俺はフィーユの小さな体を強く強く抱き締め、ぐちゃぐちゃとした様々な感情の中で最も大きな割合を占める感情を叫ぶ。




『――ありがとう……!』

『……えへへ、うんっ!』









最近なかなか更新出来ず申し訳ありません…!

そんな中、活動報告の方にも書かせて頂いたのですが、ななななんと…!

ブックマークが1000件到達致しました!

多くの方に読んで頂き、本当に嬉しいです!ありがとうございます!!!


執筆を始めた頃は夢のまた夢だった数字を自分の目で実際に見ることが出来て、本当に感動しました。

(ピッタリ1000件になる瞬間を見たくて、仕事中にソワソワチラチラスマートフォンを見てました。笑)


ブクマ1000件記念の絵やお話もかきたいなーと思っているので、もしリクエスト等ある方は是非是非!

お気軽どうぞ!嬉しいです!笑(※必ずリクエストにお応えできるとは限りませんが…m(_ _)m)


これからも頑張りますので、引き続きお付き合い頂ければ幸いです!

本当にありがとうございました!


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