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平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第8章【ドラーク編】
180/194

【1周年記念】最強サラリーマンの絶対帰還行動録

日々読んで下さりありがとうございます。

感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、本当に励みになっております!


1周年…ということで、本編とは少し異なるIFストーリです。

お楽しみ頂ければ幸いです!何だか懐かしいですね。笑


 


 ―― 何だ…………?

 ―― 何だこれは?

 ―― 何が起こっているんだ?



 今の自分が置かれている状況が理解出来ない。

 もし俺と同じ状況に陥り、すぐさま状況を理解出来るとしたら、俺はその人を心の底から尊敬する。


 何故なら俺の現状を端的に言い表すと "黒い熊()()()()()に襲われかかっている" としか表現出来ないからだ。


 その生き物は俺の知る熊よりも倍近く大きい上、アメジストのような角が生えている。そんな品種の熊は、生まれてこの方見たことも聞いたこともない。

 黒い熊らしき生き物は唸り声を上げ、今にも飛びかからんとばかりに俺を睨みつけている。


 ―― こんなのに襲われたら……絶対に死ぬ……!


 突然の状況に、俺の頭は真っ白だ。何故こんな状況に陥っているのか、全く分からない。意味不明だ。それもそのはず。


 ―― 何故なら俺はついさっきまで、会社にいたのだから。


 うちの会社がとてつもない山奥や森の中にあるわけではない。都心のオフィス街にある普通の中小企業だ。

 俺の記憶が正しければ、熊らしきものに襲われる直前の俺は仕事を終え「終電に乗り遅れるかもしれない」と焦っていた。


 エレベーターを待っていたら間に合わないと判断し、階段を勢い良く駆け下りていたその時。

 残業三昧で慢性的に寝不足な俺のボロボロボディは、勢いよく階段を踏み外した。


 ―― そう、そうだ……! 俺は会社の階段を駆け下りていたはずだ……!


 嫌な浮遊感に体が包まれ、物凄い衝撃に思わず目を瞑った。



 そして目を開けた時には……この状況という訳だ。



 周囲は緑溢れる森のような場所で、目の前には熊のような生き物。

 俺はただがくがくと震えながら、熊のような生き物を刺激しないよう、必死に頭を回転させる。


 ―― なんだこれ……! なんなんだ……!? 俺はあの時頭を打って、夢でも見てんのか……!?


 夢なら早く覚めてくれと心の底から願い、恐怖で湧き上がってくる涙を必死に抑え込む。

 こんな恐ろしい生き物に立ち向かうなんて論外だし、逃げようにも少しでも動いたら襲い掛かってきそうな雰囲気だ。


 永遠にも思えたにらめっこの末、先に動いたのは熊のような生き物の方だった。

 痺れを切らしたかのように、唸り声を上げながら俺に飛びかかってくる。


「ひっ……!」


 俺は引きつるような叫び声を上げ、思わず目を閉じて意味もなく腕で頭を庇うようにガードする。

 あんな生き物に襲い掛かられたらこんな防御等全く無意味だとは分かっているのだが、本能的に体が動いてしまったのだ。



 ―― ドンッ!!!



 その瞬間、まるでトラックが壁に激突したかのような、物凄い衝撃音が響く。

 しかし、俺の身体に一切衝撃はない。


 ―― ……ど、どうなったんだ……?


 恐る恐る目を開くと、まるで俺を守るように半透明の障壁……バリアのような物が周囲を覆っていた。

 熊のような生き物は俺に襲いかかろうとして、その壁にぶつかったようだ。


 その後もその障壁を壊そうと、熊のような生き物は何度も何度も爪で攻撃してきたり、突進してきたりしたが、障壁はビクともしなかった。

 やがて諦めたのか、熊のような生き物は悔しそうに俺から離れていった。


「……た、助かった……」


 障壁の中で震えながら熊のような生き物を見ていた俺は、離れていく姿を見ながらほっと安堵の息を吐く。

 同時に、俺を守っていた障壁もスッと消滅する。



 ―― 分かる。

 ―― これは……この障壁は、俺が出したものだ。



 こんなものを出せるはずがないのに、何故かは分からないが、確信がある。

 自分の身を守るために、無意識にこの障壁を出したのは……自分だ。


 ―― 不思議だ……体の中に、何かが、巡っている。


 何かは分からない。

 ただ、とても力のあるものだ。


 まるで最初から俺に宿っていたかのように、自然と体に馴染んでいる。違和感なく、受け入れている自分がいる。


 ―― なんだこれ……?


 この力があれば、何でも出来そうな気がする。

 俺は自分の感覚を信じ、もう一度先程と同じ障壁をイメージする。


 ―― 出来る。


 思った通り、障壁が再び俺の周囲に展開される。


「……これって……魔法、なんじゃ……!」


 自分のイメージした通りに障壁を出せたことに興奮しながら、再び意識を集中し、今度は水や炎をイメージしてみる。

 障壁と同様、自分のイメージした通りに水や炎が現れる。


 手足を動かすように、いや、呼吸をするように、ごくごく自然に、当たり前のように力が使いこなせる。


「はは……! すげぇ……! 魔法、魔法だ……! 本物の……!!」


 俺は興奮しながら、様々なものを生み出してみる。


「なるほど……自分の中に流れる力で、周囲の物質を変換させる感じ、だな……」


 俺はぶつぶつと独り言を呟きながら様々な魔法を試してみる。

 自分の中に流れる力……イメージから名付けるなら、魔力だ。

 魔力を使い、周囲の魔力に似た物質……名付けるなら、そう、魔素。魔素を変換していく。


 不思議と、周囲の魔素が感じ取れる。

 まるで五感がひとつ増えたかのように、魔素がどれほどの濃さで、どんな流れなのか、感じ取ることが出来る。

 慣れてくると魔素を通じて、周囲の地形や生き物も感じ取れる。まるで高性能のレーダーのようだ。


 こんなにも多くの情報量を感じ取っているにも関わらず、やはり違和感はない。

 それが当たり前で、生まれた時から備わっていたように、感じ取ることが出来る。

 目で物を見ようと意識しなくとも物が見えるように、耳で音を聞こうと意識しなくとも音が聞き取れるように、身体で魔素を感じ取れる。


「……夢でも、見てるのかな……」


 本当に、夢のようだ。

 憧れていた魔法。美しい自然。


 俺は零れる笑みを抑えきれず、ふわふわとした感覚のまま、空をかける。

 そう。言葉通り、空を駆けている。


 風を操り、自身の身体を浮かせる。

 身体にあふれる力のおかげか、恐怖はなかった。

 今なら先程の熊のような生き物にもう一度会ったとしても、堂々と立ち向かえる……気がする。

 ……いや、やっぱり怖いからもう二度と会いたくないが。


 上空に飛び上がり、周囲を見渡す。


 目に映る、うっすらと紫がかった夕陽を浴びて輝く木々。

 澄みわたる川が流れ、その先に見える湖には空が反射して、まるで地面にも空があるようだ。

 湖の向こうには城壁に囲まれた街らしきものが見える。


 これまで見たことのない景色に、圧倒的な自然。

 自分の中に確信が生まれる。



 ―― あぁ、ここはまさしく、異世界だ。



 大好きな小説や漫画で何度も何度も読んだ。

 何度も何度も妄想した。



「異世界、転移……!」



 風を感じるように、両手を広げる。




 俺、(ワタリ) 永久(トワ)の異世界生活1日目が、希望と共に幕を開けた。





気付けば小説を公開し始めてから1年がたっていました。

読んで下さった皆様、本当にありがとうございます!


1周年記念、ということで!

最強サラリーマンの絶対帰還行動録、でした!


続きません!笑


本当はフィーユと会ったり、最強ゆえの苦悩…みたいなのを書こうと思ってたのですが(寧ろ最初に思い浮かんだシーンはそこでした)1話リメイクしてたら文字数がえらいことになりまして…森から出ることすら叶いませんでした…


因みに最強になっても、永久は帰る理由があるので変わらず元の世界への帰還を目指します。


この後は森で死にかけのもちを見つけて救い、空から見えた街ノイに向かい、凄い魔力持ちが近づいて来たということで危険な輩を迎え討とうとしたロワ王と普通に和解して友達になり、情報集めと言うことで平民街をうろついてノイの人達と仲良くなったりします。

どんだけ文字数掛けるつもりだったんだ…という感じですね。笑


これからも頑張りますので、引き続きお付き合い頂ければ幸いです!


因みに0:30現在、1周年記念イラスト描いているのですが全く終わる気配がないです…。

取り敢えず小説だけ先に公開しました…(苦笑)


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